小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

おちていく…

INDEX|9ページ/40ページ|

次のページ前のページ
 

その日を境に、愛子が残業する日には矢田も残るようになっていた。

一人で残業をすることに慣れていた愛子は、最初は矢田の存在が気になりペースが掴めなかったものの、

時間が経つにつれ慣れていった。

今では一人で残業をすることが、淋しくもある。

残業が終わると、二人はいつものあの居酒屋でたわいも無い話しをしながら

食べたり飲んだりする、そんな日々を繰り返していた。

矢田とこういうふうに行動を共にするにつれ、愛子の心には恋心が芽生えて、

それは大きく育っていき始めていた。

けれど、その気持ちを心の奥底にしまい込む。

恋愛関係よりも、もしかしたらこんな関係の方がラクなのかもしれない、

と無理矢理思うことにしていた。

矢田は、あの日以来、愛子に恋の話をしなくなった。

話すことと言えば、いつも家族の話ばかり。

だから、愛子は自然と自分には気がない、と思うしかない。

たまたまあの時の私は、失恋をして心が淋しかっただけ。

淋しかった…

淋しかっただけ…

そう、私はただ淋しかっただけ…

だから、誰でもいいから抱き締めて欲しかっただけ…

ただそれだけ…

それだけなのだから、また新しい恋を見つければいい。

新しい恋をすれば、課長を忘れることが出来る。

課長を好きになったことも、忘れてしまう…

と、愛子は自分に言い聞かせる。



作品名:おちていく… 作家名:ミホ