おちていく…
矢田と付き合って、2年。
この関係は、この会社を辞めない限り切れることはないのだろう、と愛子は思っていた。
愛子は大学を卒業後、今の会社に就職した。
3ヶ月の研修期間を無事に終えて、今の課に配属され3年になろうとしている。
それが矢田のいる課だ。
愛子は慣れない仕事ながらも、一連の仕事を覚えこなしていった。
毎日が忙しく、残業も度々ある。
そんな怒濤の日々を過ごし、あっという間に一年が経った時には、
愛子は仕事で信用される立場になっていた。
と同時に、大学から付き合っていた彼氏を失った。
別れの原因は、勿論、すれ違い、と言いたいのだけれど、
やはり愛子が自分の彼氏よりも、仕事を優先していたことだろう。
「なぁ、愛子?僕と仕事、どっちが大事なんだよ?」
今夜も残業で、愛子は彼氏と前々から約束していたデートをドタキャンした。
悪いな、と思いつつも、優しい彼なら分かってくれてると思っていた。
けれど、ヘトヘトで家に辿り着き疲れ果てた躰を休めようとしていたその時、
突然、愛子のもとに彼氏がやってきて、そして愛子に言った第一声がその言葉だった。
愛子は疲れすぎていて、話し合ったり、ケンカし合ったりするのが面倒くさかった。
それで迷わず、仕事、とだけ言った。
本当に、迷うことなく…
あんなに優しかった彼氏がすごい剣幕で何かを言っていた。
けれど、愛子にはそれらが耳に入らないくらい疲れていた。
それを最後に、彼氏とは会っていない。
あっけない別れだった。
彼氏と別れて、淋しくないといえば嘘になる。
けれど愛子は、仕事を選んだ。
だからなのか、淋しさはあまり感じない。
そして愛子は、更に仕事に打ち込んでいった。
今は恋愛より仕事!
そう自分に言い聞かせる様に―――。