おちていく…
2:墜ちていく
「青山君。ちょっと」
「はい。課長」
愛子は今しがた取り掛かろうとした伝票入力を止め、矢田の元へと立ち上がった。
「何でしょうか?」
「これ、10部コピーを頼む」
矢田に素っ気なく渡された、A4の用紙。
「分かりました」
愛子は嫌な顔一つせずに、コピー室へと向かった。
「愛子…ごめんよ。さっきは、キツい言い方をして…」
誰もいないコピー室。
愛子に数分遅れて入って来た矢田は、すぐさま愛子を抱き締めキスをした。
床には、さっき矢田が愛子に渡した真っ白い用紙が散乱している。
勿論、コピーなんて嘘だった。
矢田が愛子との密会をするための口実だったのだ。
「あぁ…、課長…ダメ…」
矢田が、愛子のスカートの中に手を入れようとした。
それを愛子が阻止しようと矢田の腕を掴む。
「今は、課長じゃないだろ?名前で呼べ?」
抵抗する愛子の腕を後ろ手に回し、矢田は愛子を後ろ向きにさせ
尻を突き出させるような格好をとらせる。
「ヤァ…ダメ…。良ぅ…ぃ…ち…、あぁ…ダメぇ…」
矢田に両腕を掴まれ、コピー機に伏す格好となった愛子は、
抵抗すら出来ずにされるままとなった。
矢田は愛子のスカートをたくしあげ、ストッキングと下着を一気に下げた。
露になった愛子の肌は、冷たい空気に晒された。
矢田は片手で自分のベルトを外し、ファスナーを下げた。
スラックスとトランクをだらしなく下ろした矢田は、
待ちきれないとばかりに愛子を後ろから犯し続ける。
そして、何度も何度も欲望のまま突き上げた。
愛子は矢田に突き上げられるたび、声が漏れそうになるのを堪えた。
けれど、堪らず半開きの唇から甘い吐息が漏れ出していた。
その愛子の口を塞ぐように、矢田は自由な掌を愛子の唇の含ませ
かき回すように指を動かすのだった。
「愛子…、イキそうだ…」
矢田の腰の動きが、更に早くなる。
「ア、アタシ…も…」
うっ………。
矢田の短い嗚咽が部屋に響く。
そして、愛子に覆い被さるようにして果てるのだった。
矢田の荒い息が愛子の耳元にかかる。
それに合わせるように、愛子も息をした。
「じゃ、今日の夜。いつもの時間に行くから、待っていなさい」
矢田は乱れた服を整え、さっさとコピー室から出ていった。
行為が終われば、また上司と部下。
矢田は冷たい態度で、愛子に接する。
愛子はいつもそれを受け入れるだけ。
我慢するしかなかった。
秘密の関係は、誰にも知られてはいけない。
当たり前といったらそうなのかもしれない。
けれど、愛子は淋しかった。
愛子は短く息を吐き、そして自分で矢田が吐き出した白濁液を拭い
下着やスカートを直して何もなかったかのように身支度を整えた。
最初は、そんなことをしている自分が惨めだった。
それが今では慣れてしまい、そう思う自分がいつの間にかなくなっていた。