おちていく…
矢田は、ベッドに上半身を起こし携帯の画面を見つめていた。
そして愛子に気付くと、慌てる様子もなく携帯をしまった。
「何をしてる?早く、おいで」
ベッドサイドに歩み寄る愛子を、待ちきれないというばかりに押し倒す。
バスタオルだけ纏った愛子の躰は、矢田の掌によりいとも簡単に剥ぎ取られ露になった。
愛子の躰をしばらく眺めると、矢田はむさぼるように愛撫を始める。
「痣、だいぶ薄くなったな」
数日前、矢田につけられたキスマークだ。
愛子の躰には、数十ヶ所と矢田の唇によって痣がつけられていた。
イタッ……
思い切り噛まれたような激痛が、愛子の躰に走った。
矢田は、新な痣を増やしたのだった。
愛子を自分のモノだという意味を込め、矢田はそれをやめない。
痣を増やすことで、愛子への愛の証を刻む。
俺のモノだと言わんばかりに。
矢田は嫉妬深い男だったことに、愛子が気づいたのはつい最近だった。
いや、本当はずっと前から知っていて、それを知らないふりをしてきたのかもしれない。
愛子は現実逃避をしなければいけいところまで追い込まれていた。
矢田に所有物と扱われ、でもそれは、大切だから、とか、好きだから、とか、愛してる、
とかの言葉で誤魔化されてきたのかもしれない。
矢田は、束縛が愛だと勘違いをしていたのだろう、と思った。