おちていく…
「愛子?早くシャワーを浴びておいで」
バスルームから出てきた矢田はバスローブに身に纏い、片付け物をしていた愛子に言った。
「これが終わったら…」
「そんなことは、あとでしなさい。早くシャワーを…」
「分かったわ…」
矢田の言葉を遮るように、愛子は急いでバスルームへと向かった。
矢田はいつも正しい。
いつも正論を述べ、理屈を並べる。
愛子の入る隙間さえない。
ここでは、自分が正しいのだと疑わない。
だから口答えも出来ない。
矢田の言うことは正しいから。
それが正しくなくても、正しくなってしまう。
愛子の前だけは―――。