おちていく…
大人で、余裕があって、男らしくて、仕事が出来る。
理想通りの彼は、今は過去のこと。
時間(とき)とは残酷で、素晴らしい過去(じかん)はいつしか色褪せて薄れていく。
その数少ない記憶の中で、楽しい想い出達がキラキラ輝いて更に美化される。
今が辛くても、その想い出があるから今までやって来られたのかもしれない。
でももう愛子には、自信がなかった。
限界に近かった。
ここまで何もなくやって来れたのは、奇跡的なのだろう。
それとも、ただ単に運が良かっただけなのか。
周りが無関心過ぎて、皆自分のことで精一杯だから。
何にせよ、愛子は矢田との関係に終止符を打とうと考えていた。