おちていく…
どのくらいの時間、コピー室にいたのだろうか。
数時間前の出来事を妄想していた愛子は、誰かがドアを開ける音で現実に引き戻された。
愛子は、一応コピーをしていたフリをして用紙を纏めた。
もうそろそろ、戻ってもいいだろう…
そう思った愛子は、真っ白な用紙を抱えコピー機から離れた。
キャッ!
いきなり後ろから、誰かが愛子に抱き付いてきたのだ。
誰………?
躰が強ばり、声が出せない。
愛子は、精一杯の力でコピー機にしがみついた。
しかし、所詮は女の力。
あっけなくコピー機から引き離され、床に押し倒されてしまった。
イヤ………
誰か、助けて!
課長―――。
そう叫んだはずの声は、恐怖で声が掠れて声にならなかった。
愛子…。
そう名前を呼ばれ、伏せていた顔をグイッと持ち上げられた。
「愛子…?俺だよ…」
閉じていた瞳を、愛子は恐る恐る開ける。
課長………?
そう呟いた愛子は、その後の言葉が見つからずただただ矢田の顔を見つめていた。
「何故、先に帰ってしまったんだ?なぁ?」
厳しい顔をして、矢田は愛子を見つめた。
矢田のそんな顔を初めて見た愛子は、何も言えずただ矢田の顔を見た。
愛子のアゴにはまだ矢田の冷たい指先が、顔を背けないようにしっかりと愛子を掴まえていた。
愛子は頷くことも、横に首を振ることも出来ない。
そして、視線を外すことも許されなかった。
矢田は更に、愛子のアゴをクイッと持ち上げる。
「どうしてなんだ?」
「……ごめん…なさい…」
掠れた声を必死に出し、矢田に謝った。
怯える愛子を矢田は、もういい、と言って、スカートをたくし上げ下着の中に指を滑り込ませるのだった。
イヤッ……
愛子はいきなりの矢田の行動に、激しく抵抗した。
暴れる愛子の両手を矢田は片手で掴み、うつ伏せにさせる。
イヤァ……
こんなとこじゃ、イヤァ……
涙を堪え、矢田にだけ聞こえるように訴える。
こんなところを誰かに見られでもしたら……
理性だけが覚醒されて、行為を楽しむとか、会社での矢田との情事を楽しむとかの甘い時間とはほど遠く、
目の前にいる矢田がどこか知らない男に見えた。
イヤ……
いつの間にか下着を下ろされ、愛子の中に矢田が無理矢理入ってきた。
いっ……
矢田の体重が愛子に感じるたび、いつの間にか痛みは和らぎ快楽を呼び醒ます。
時より漏れる愛子の嗚咽に、矢田は更に興奮が高まり激しく愛子を突き上げるのだった。
床に伏していた愛子の腰をグイッと引き寄せ、矢田は四つん這いにさせた。
「もう二度と、勝手な行動はするな。分かったな?」
矢田は愛子の耳元で囁いた。
激しく腰を打ち付けられるたび、愛子は声が漏れ出すのを必死に堪える。
「分かったのか?」
返事をしない愛子に、矢田は臀部を打擲した。
パチン!
乾いた音が部屋に響く。
うっ……
矢田に打擲され、愛子は嗚咽を漏らした。
低く重たい声で、矢田はもう一度愛子に言う。
「分かったのか?」
「……は…い」
「よし、いい娘だ」
厳しい顔から一転、矢田の顔が緩む。
「愛子…。そろそろイっていいか?」
うん…
愛子が頷くのを確認した矢田は、腰の動きを早めた。
そして短い嗚咽とともに、腰の動きを止め果てたのだった。
呼吸を整えた矢田は、愛子をその場に残し部屋をあとにした。
残された愛子は、矢田の残骸を拭き取るためトイレへと走った。
汚れた下着は気持ち悪く、愛子はその日風邪と言って会社を早退した。
矢田も、何も言わず愛子の早退を認め「早く治せよ」と目を合わすことなく告げただけだった。