おちていく…
狭い部屋は機械の独特な匂いが立ち込めていて、少し蒸し暑かった。
誰もいない、静かな小部屋。
愛子はその静かな部屋で、ぼんやり機械を見つめていた。
何もすることがなくなると、人は妄想に耽(ふけ)てしまうものらしい。
愛子はまた、あの夜のことを思い出していた。
どうやっても雄の矢田が、頭から離れなかった。
キスする顔。
筋肉質の躰。
髪を撫でる感触。
そして、一つになる瞬間の歪ませた顔と声。
どれもが夢のような錯覚を覚え、儚く散ってしまいそうな記憶。
夢なのか現実なのか、もはや愛子には分からなくなっていた。
夢…
一夜限りの、夢―――。