普通がいい!
今、佐藤と帝釈天
たいしゃくてん
を名乗る男は学校の対応室にいた。
現在の時間はちょうどに一時間目の始まりのあたりである。
「……完全にサボりだ」
すると、学校から出された紅茶を優雅に楽しみながら、帝釈天さんは口を開いた。
「案ずることはない、単位なら私が先生方に掛け合えばいいこと………」
この人、帝釈天さんは帝釈天財閥の跡取りにしてこの学校の理事長である。
そして、お金持ちの中では「経済学の鬼才」とさえ呼ばれるほどの切れ者らしい。
そんなすごい人になぜか僕は気に入られているのだった。
「いや…それは、ありがたいのですが、授業を、さぼるのも、どうかと、思ったり思わなかったり…」
「ふっ、君は本当にいいね」
彼は時々意味の分からないことを言う。
「な、なにがでしょうか…」
「私の周りには、常に私の財産を狙う者どもであふれている」
そこで彼は「しかし」と付け足す。
「君にはそれを感じることはない、君はとても好感を持てる人だと思ってるよ」
「は、はぁ…ありがとう、ございます……」
そこで、ふと気が付く。
「あの、アメリカに行っているはずでは、明日まで…」
すると、帝釈天さんは小さく笑った。
「君に逢うため、早々に切り上げたよ」
ここまで気に入られると少し怖いものを感じる。
「やはり、私はあの炯々
けいけい
とした目を見るのは、いささか気が乗らない」
「帝釈天さんにも苦手があるんですか………」
「そりゃ…あるさ」
帝釈天さんは目を細めた。
帝釈天さんはカップを置きこちらを見つめてくる。
この空気には覚えがある。
さっきまでのゆったりとした空気が変わったのだ。
「……極秘に頼みたいことがある……」
「……なんでしょうか……」
「ある女の子を預かってほしい…」
さらりとすごいことを帝釈天さんはしゃべる。
色々お世話になっているところもあったため、とりあえず何でも聞く気ではいたがさすがにこれだけはさすがに無理であると悟った。
それもこれも…………。
「う、うちには、居候が四人もいます!」
「お金なら何とかしよう」
「そうゆう問題じゃねぇぇぇ!」
「大丈夫、君ならできる」
「…何が、ですか……」
すると、帝釈天さんはおもむろに指を鳴らした。
………しかし、何も起きる気配がない。
「ん? どうしたんだい………?」
帝釈天さんは後ろに控えていた補佐の人に話しかける。
補佐の人は携帯に向き合っていた。
「…逃げられたか、さらわれたようです……」
「何?」
「処罰はいかように?」
「後だ、探せ」
補佐の人は軽く会釈をした後は知ってどこかに行った。
この時の帝釈天さんはものすごい気迫
きはく
だった。
「すまない、もう授業に戻っていい」
そうすると、帝釈天さんは携帯を取り出し何かとは話をしながら部屋を出ていく。
「な、なにがあったんだ…」