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普通がいい!

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学校に間に合った。
別にサムライさんがすごい俊足
しゅんそく
というわけではない。
学校についた時間を見れば分かる。
7時40分………。
「な、なぜ?」
まだ寝ぼけているのか、またはこの学校の時計が壊れているか…それとも、部屋の時計が7時50分に壊れたのか……もはや考えるまでもない…。
「な、なんという茶番だ……」
「あ、主
あるじ
そう気を落とさず…学校に早く着くことはいいことですよ?」
「いいことのはずが、僕のテンションは朝からとても悪いよ……」
かなりブルーになっている佐藤を見てサムライさんは苦笑いをするしかなかった。

その後、サムライさんと別れて教室へ向かう。
つい最近までは「私も学校に行き、主を守ります」だのなんだのとぬかしサムライさんも付いてこようとしていたが、佐藤の必死の説得で何とか納得させたのだ。
「ま、まだ渋
しぶ
ってはいるけど……」
この時間は朝練だので廊下にはあまり人はいない。

クラスのドアを開けようとする、と中から自分の名前が聞こえてきた。
思わずドアから手が離れる。
そして、いけないと分かりつつも、聞き耳を立ててしまう。
「…わ、悪口だったらどうしよう…」
凡人たる佐藤は些細
ささい
な悪口にも傷ついてしまう小心者なのだ。

「あんたさぁ…本当なの?」
「お、おお…」
「まさかねぇ…」

この声の主
ぬし
は多分、このクラスのアイドル福野森
ふくのもり
芳華
ほうか
とスケバン委員長で知られている針乃
はりの
春香だ。
福野森はその小柄な容姿と荒い口調がかわいいらしく、ファンクラブがあるくらいだ。
アイドルオーディションの話も舞い込んできているらしい。
一方、針乃も負けてはいない。
そのスケバンを思わせる容姿と口調に反して超まじめな性格が多くの男を釘付けにしている。
自分はグレているとかいう姿が微笑ましいらしい。
「な、何話してるんだ……」
中は静かでその二人以外には何も居ないようだ。
そこでどんな話をしているか、しかも話題は自分なのだ、気にならないわけがない。
すると、福野森が話し始めた。

「まさか、あんたに………………惚気
のろけ
られるとはね…」

佐藤はそれを聞き、固まる。
なぜ、自分の話題で、惚気話が出てくるのか、理解できないからだ。

「しょ、しょうがないだろ! …こんなの、お前にしか、話せねぇし…」

針乃の声がだんだん小さくなってくる。
佐藤は、まだ固まっていた。

「それに、あいつ、可愛いし、なんか守りたくなるし…」

佐藤はそれを聞き、さらに混乱する。

「はは…河合石
かわいいし
を守りたいって、へ、変なの……」
佐藤はいまだに現実を受け入れられていない。

「と、とにかく、好きなものは好きなんだよっっ!」



…………この時、佐藤の思考は完全にブラックアウトした……………。
作品名:普通がいい! 作家名:ks