普通がいい!
いやだが、やらなければならない。
「ひと月たってもまだ慣れないんだよな、これ…」
自分のベッドのそばにあるクローゼットのところまで歩みを進める。
そして、ゆっくりとドアを開ける。
すると、中から妙に肩幅の大きい巨体が倒れこみ、床に転がった。
「お、おお、おおお、おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっ………!」
するといきなり絶叫し始める一人、シュフさん。
「ひぃぃぃぃっっっっ!」
思わず情けない声が出た。
…………最初のうちはゾンビか何かと間違えたくらいだ、今でも慣れない。
やたらと肩幅が広いのは、寝るときに背中にハンガーを入れてクローゼットに引っかかるという何とも奇妙な寝方をするためである。
ちなみに何で倒れてきたかというと、よくハンガーのフックを寝ている間に壊すからである。
「はぁぁ……慣れねぇな…」
今も心臓が痛い。
胸を抑えつつ、キッチンに戻る。
すでにユウが焼き魚などを並べ、食事の準備をしていた。
「ありがとな、ユウ」
「おお、早く貪
むさぼ
り尽くそうぞ!」
見かけ中学生ほどの有はその見かけに似合わず割と万能である。
「貪らんでいい」
すると、いきなりサムライさんが床に両手をついた。
「すみません…我が主、いかんせん、家事が不得意で、なにも、できず…」
「なにもせんでもええよ」
ちなみに、サムライさんは見かけこそ女みたいだが、男と本人は言っているがそれを信じる気にはなれない。
あまりに見た目が美人すぎるのだ。
すでにユウはご飯を食べ始めている。
「僕達も食べよう」
「御意
ぎょい
」
「普通に話して…」
はぁ、と息を吐く。
ご飯を食べ始める。
すると、ユウがさりげなく焼き魚を取ろうとする。
「何か言えば普通にやるよ」
「え!? いいの?」
「ああ」
「ありがとう!」
ユウは普通にしていれば可愛い奴だ。
隣でもしゃもしゃと飯を食らっているユウを目じりに、ちらりと時間を見る…。
目を擦る。
「あ、あれ?」
7時50分、遅刻ギリギリラインだ。
「そ、そういえば、目覚ましが鳴らなかったような……」
目覚ましを見に行くと、針が、動いて――――
―――刹那
せつな
、体はベッドの近くに置いてあった鞄を乱暴につかんだ。
「遅刻だぁぁぁ!」
パニックとなり、どたばたと走り出す。
そこでベットの足に右足の小指をぶつけた。
「い、いてぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!」
そこにユウとサムライさんが寄ってくる。
「大丈夫ですか!?」
「お、おいおい大丈夫か次郎!?」
ゴロゴロと床を転がりながらも何とか言葉を紡ぎだす。
「が、学校ぉぉぉぉぉっっっ!!!」
「分かりました………私が運びます」
男として女性? に運んでもらうのは情けないが今は頼るほかない。
「た、頼んます………」
サムライさんは佐藤を担ぐ。
「で、では皆さん、い、行ってきます…」