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一緒にゲーム作りませんか?

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「来栖さんっ!」
 オレはほとんど体当たりに近い状態で仁さんに右腕を?むとお互い地面に転がった。
「テメェ! 邪魔するな!」
 仁さんはギラ付いた目をオレの方に向けて拳を作り殴りかかってきた。ケンカなんかした事が無いオレは正直怖くてその場から動く事が出来なかった。
 目を閉じて歯を食い縛るがその時だった。
「そこまでです!」
 目を開けると入り口の前で待機していた神谷さんが仁さんの腕を抑えて後ろに回した。
「は、放せテメェ! 会社クビにされてぇのか?」
 仁さんはまるで狂犬のようにオレに飛びつこうとしていた。
 すると来栖さんがオレの横に膝を付いた。
「吉崎君、大丈夫?」
「あ、うん……」
 オレは頷いた。
 確かにオレは転がっただけでどこも痛くないし怪我した訳でもない、それより来栖さんに怪我が無くて良かった。
 重役さん達も止めようとしたのだろう、席を立ち上がっていた。そして昭夫さんは神谷さんに命じた。
「神谷、その不心得者をつまみ出せ」
「はっ!」
 神谷さんは暴れる仁さんを引き摺るようにドアの方へと連れて行った。
「クソッ! 放せ! 放せぇ――っ!」
 仁さんの叫びは虚しく扉が閉まると会議室に静けさが戻った。
「ふぅ……」
 昭夫さんはため息を零すとオレの方へ歩いてきて床に膝を付くと頭を下げた。
「吉崎君、孫を助けてもらって礼を言おう、ありがとう」
「い、いえ…… 怪我が無くて何よりです」
 正直まだ心臓がバクバクしている、マジで怖かった。
 来栖さんも顔を青くして細い指先が震えている、彼女も怖かったんだろうな、
「仁の事はプラネット社の責任だ。謝罪もするし責任も取るつもりだ…… しかし君に聞きたい事がまだ残っている」
「……何ですか?」
 オレは恐る恐る聞いてみる、
「君は仁の事を知っていたんじゃ無いのかね?」
 昭夫さんは来栖さんから夏休みに仁さんがオレの家に来た時の事を聞いたと言う、
「本当なの?」
 来栖さんは尋ねてくる、
「……うん」
 オレは目線を落とすと小さく頷いた。
「どうして言ってくれなかったの? 言ってくれれば私だって……」
 オレは来栖さん達の顔を見る事が出来ずにそのまま言った。
「……負けたくないって思った。ゲームを冒涜して、それで香奈達もバカにした」
 オレの脳裏にあの時の仁さんの言葉が浮かび上がった。だが正直な所、オレは彼を責める事はできなかった。
「オレもあの人と同じかもしれない……」
「どう言う事?」
 するとオレは何も言えなくなった。
 仁さんに言われた言葉に腹を立、結果つかさちゃんに迷惑をかけ香奈を泣かした。さらに来栖さんを巻き込んで危ない目にあった。
 2人は許してくれたし来栖さんも無傷で済んだ。しかしこんな事をしてもオレはただの偽善者だ。
 それはオレが一番良く分かっていた。
「オレは…… 最低の人間なんだ」
 オレは手を握り締めて歯を食い縛った。だけど言わずにはいられなかった。
「最初は別のゲームを作る気なんかなかった。でも、好きな子にゲームを作らないかと言われて…… 思わず頷いて、それで……」
 頭の中がグチャグチャでまともに言葉にすらならない、オレの目から涙が流れた。
「いけませんか? オタクが人を好きになっちゃいけませんか?」
 自分でも情けないと思ってる、
 大勢の、しかもその好きな子の前で醜態をみせるなんて情けないを通り越して呆れるだろう、
「……吉崎君」
 すると昭夫さんがオレの左肩に右手を乗せた口を開いた。
「人の為に何かをする事が、そんなに間違いかね?」
「……えっ?」
「言っただろう、話したい事があると」
 そう言えば……
 昭夫さんは息を吐きながら遠い眼をしながら言って来た。
「君は私の若い頃にそっくりだ」
「そっくりって…… オレと?」
 昭夫さんは頷いた。