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一緒にゲーム作りませんか?

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 仁さんが脅迫した為に参加者が少なかったからかと考えたけど、それにしたって日本一の大企業が起こしたイベントだ。参加者は日本中にいるはず、そんな金がいくらあっても足りないような事はいくら仁さんだってやらないはずだ。
「君達のゲームはやらせてもらった。まずは吉崎君の方だが……」
 オレは固唾を飲み込んだ。
 絶対良い評価など得られないと言うのは分かっている、テストが全然出来ずに赤点確定で帰ってくるのと同じだった。
 だがその時感じる思いとは比べ物にならないくらいのプレッシャーがあった。
「はっきり言うとば全然駄目だ」
 その言葉に頭の中が真っ白になると圧倒的な絶望感がオレの心を包み込んだ。
 オレは隣りの様子を見る事すらできなかった。
「お祖父様! ……そんな言い方……」
 来栖さんが何か言ってる気もするが今のオレには理解する力すらない、
 まして反対側の仁さんの顔を見る事すらできない、だけどどんな顔をしてどんな心境なのかは分かってる、最早これまでだとオレは確信した。
「……以上の事を踏まえ今後の精進を望みたい、次に仁君」
「はい!」
 ようやくオレの意思が元通りになる、
「よく出来ているな、さすが専務の息子と言った所か……」
「ありがとうございます」
 仁さんはわざとらしいくらいに深々と頭を下げた。
「専務も出来の良いご子息を持った様でなによりだ」
「きょ、恐縮です、社長」
 昭夫さんの隣りにいる人が仁さんの父親だろう、
 前髪が少し後退した紺色のスーツに赤と緑の2色のネクタイを巻いた人が頭を垂れた。しかしどこか気まずそうだった。
「これなら別の所でも出来るだろう、今すぐここを出て行ってもらおう」
「えっ?」
「ええっ?」
 オレは思わず顔を上げた。
 来栖さんも驚いて仁さんを見る、
 しかし他の重役の人達は目を閉じて首を振りため息を零すと、それに構わず昭夫さんはディスクの入ったケースを手に取った。
「聞えなかったのか? 今すぐこの駄作を持って出て行けと言っているのだ。そして会社の出入は禁止する」
「そ、そんな…… どうして、何故ですか?」
 仁さんは椅子を蹴って立ち上がる、
「それは君がよく知っているんじゃ無いのかね?」
「うっ……」
 すると仁さんは身を震わせた。昭夫さんは鋭い目をさらにきつくする、
「……随分と裏じゃ凄い事をしているそうじゃないか」
「な、何の事ですか? 僕にはさっぱり……」
「この愚か者っ!」
 昭夫さんのが一喝にその場にいる者達は身をビクつかせた。一瞬ビル全体がグラついたかと思った。
「ヒッ……」
 仁さんは泣きそうになると腰を抜かしてその場に尻餅を付いた。とてもモデルの仕事をしているとは思えないくらいだった。
「他人のアイデアを強奪し、あまつさえ脅して作らせた事がバレ無ければ分からないとでも思ったのか?」
「人に…… 作らせた?」
 オレのところにもアイデアを奪いに来たから分かるけど人に作らせたって……
「プログラマー達が全て吐いたぞ」
 仁さんは自分自身でやった事など何も無い事になる、
 昭夫さんは仁さんの不正を人を使って調べた結果、自分の大学に存在するゲーム研究会の人間やプラネット内のシナリオライターやプログラマー達の仕事の事や家庭の事情などで弱みを握って作らせた事を知ったと言う、
「ち、違う! 脅してなんか無い! ちゃんとみんな話し合いで納得してくれたんだ! それに手間賃やアイデアだってちゃんと取引で手に入れて……」
「断れない状況で『YES』としか言えないのが話し合いだとでも言うのか? 相手の夢を踏みにじり心を傷つける事など取引でも何でもない、ただの薄汚い犯罪者だ!」
 昭夫さんが目を光らせると仁さんは言葉が無くなった。
 次第に眉間に皺が寄るといくら位するのか分からない指輪を嵌めた指を折り曲げて手を強く握り締めた。
「何でだよ…… ゲームなんてオタクのオモチャだろ! プログラムできる奴なら誰に作らせたって同じじゃねぇか!」
「もう止せ仁! 全てバレてるんだ。それ以上言えばお前の社会的信用が無くなるんだぞ」
 仁さんのお父さん、央真専務は立ち上がり助け舟を出した。どんなに酷い人間でもこの人にとっては血を分けた息子だ。どうしても助けたいんだろう、
 だが仁さんは父親の好意を無駄にした。 
「うるせぇ! 大体俺はこんな企画自体が気に入らなかったんだ。オタク供が作る側になる事が間違いなんだ。ただ会社が作るゲームを買ってありがたがってりゃそれで良いんだよ!」
 とうとう化けの皮が剥がれて本心をぶちまけた。
 すると来栖さんは立ち上がって口を抑えると怯えた目つきで後ずさりしながら仁さんを見た。
「嘘…… そんな事言うなんて……」
「せ、聖子? 違うんだ! 俺は嵌められようとしてるんだ! 君なら分かってくれるだろ?」
 必死で弁解するがすでに遅かった。
 一度口から出した言葉は二度と元に戻らない、
「いやっ!」
 仁さんは震えながら右手を伸ばすが来栖さんは思わずその手を払った。
 その右手を見つめて信じられないと言う顔をするがやがて顔を歪ませると右手を振り上げた。
「貴様ぁ―――ッ!」
 不味い!
 と思った瞬間オレの体が動いた。