小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

一緒にゲーム作りませんか?

INDEX|39ページ/44ページ|

次のページ前のページ
 

「私が君と同じ頃はね、テレビゲームなんてものには縁が無かった」
 今から数十年前、
 その頃からゲームはあったらしいが今みたいなビデオゲームがまだ流行っておらず、ピンボールや車が動かずに道路が動くと言うドライブゲームなどがゲームセンターに並んでいたのだが昭夫さんにはそれすら出来なかったと言う、
 父親に先立たれ生活が貧しく、下には幼い弟や妹がいて母親は工場で働き、自分は建設現場でアルバイトをしながら大学受験をして、食事も殆どメザシか梅干だけだった事が多かったらしい、
 しかしそんな生活でも苦しいとか辛いとか思った事が無かったと言う、勉強の合間、昭夫さんは弟さんや妹さん達と一緒にノートの切れ端や捨ててあった新聞の広告などの裏に鉛筆でマスを描いて作ったオリジナルのスゴロクで遊ぶのが唯一の楽しみだったらしい、
 そこには子供達の笑顔が溢れていた。
 たとえ金は無くとも幸せがあった。
「……私はいつか弟や妹達に紙のスゴロクでは無い、本物のゲームをプレゼントしようと心に決めた。その為にガムシャラに勉強し、大学に入って、事業を始めて今ではこの通りだ。最も、初めてゲームをプレゼントしたのは女房だったがね」
 皺だらけの頬を指を掻きながら照れくさそうに言う、
 昭夫さんはオレの顔をジッと見つめると、
「私にとってゲームとは家族の絆なんだ。君にとってゲームは何かね?」
「オレは…… オレにとっては……」
 オレは手の甲で涙を拭うと昭夫さんに言った。
「宝です。オレにとってゲームは…… 友達や仲間達とめぐり合わせてくれた…… 大事な宝物です!」
「……そうか」
 すると昭夫さんは微笑する。
「正直シナリオもプログラムもまだまだだが、君達の熱意や気持ちは伝わった。我々はそんな人間を見捨てたりはしない」
 その言葉に隣りの来栖さんは目元に涙を浮かべ、遠くの重役さん達も微笑しながら頷いた。
 昭夫さんは立ち上がると今まで見せていた厳格さは消えて優しげな笑顔で右手を刺し伸ばした。
「躓かない人間なんていない、もう一度応募してくれるな? 君の仲間達と供に」
「……はい」
 オレは昭夫さんの手をつかむと立ち上がり、力強く頷いた。