一緒にゲーム作りませんか?
「お待ちしておりました。吉崎勇様ですね?」
扉を入ってすぐ、オレは受付のカウンターの前にいた人に名前を呼ばれた。
オレより背の高い、黒い服に赤いネクタイのオールバックに眼鏡を掛けた40代後半の彼の名前は神谷直人さん、来栖さんのお祖父さんの秘書で来栖さんを幼い頃から世話してきた人だと言う、
「お嬢様、これからは私が御案内いたします。お嬢様は先に旦那様の元へ」
「はい、じゃあ先に行ってるわね」
リアルで『お嬢様』何てセリフ初めて聞いた。
来栖さんはそれだけ言うとオレに手を振りながら去って行った。
「それでは吉崎様、先に受付で手続きをお願いします」
「あ、はい」
神谷さんがカウンターに向って手をさし伸ばすとオレは受付のカウンターの中にある来栖さんよりも少し年上の黒いストレートヘアの奇麗な受付嬢のお姉さんに受付票を貰いオレの名を書いた。
すると受付嬢さんはカウンターの中から長細い小さなプレートに白い渦を巻いた星雲の中に五亡星が合わさり中央にはには『Guest』と書かれたバッジをオレに渡した。
「このバッジを付けれていれば2階以上の部屋へ上がる事を許されます、しかし3階から上の階へは関係者以外立ち入り禁止となっておりますのでご注意ください」
つまり企業秘密って事か、当然と言えば当然か、見てみたい気もするけど……
オレは神谷さんの案内でエレベーターに乗ると2階を目指した。
この人は職務に忠実なのか喋ってこなかった。初対面でベラベラ喋られても困るが知らない人と密室でいるとマジで緊張する、
「吉崎様」
「は、はいっ?」
思わず声が裏返った。いきなり言われたのでビックリしたからだ。
しかしオレの反応などどうでも良いかの様に神谷さんは続けてきた。
「先に申し上げておきますが、旦那様…… すなわち我社の社長でいらっしゃいます来栖昭夫様は気難しいお方でございます。くれぐれもご注意ください」
「あ、はぁ……」
気難しいお年寄り、香奈より苦手なタイプだった。
オレは会議室にやって来た。神谷さんが扉をノックをすると中に入る、
オレの学校の教室の2倍はあろう塵1つ無い奇麗な部屋にオレが居る廊下側にはパイプイスが3つ、左側には来栖さんが座っていた。
そして窓側の方には長い机が繋がれていてオレよりも遥かに年上の50〜60代くらいの年配の人達が7人が窓側の席に座っていた。
特に真中の席に座っている少し細いけど白い髭を生やし、白髪をオールバックにしてうなじ辺りで縛った黒い縁取りの丸い眼鏡をかけた。目の鋭い紺色のスーツと黒いネクタイを結んだ凄い威厳を放っている人が1番目立った。
その真中の人に向って神谷さんは言った。
「社長、お嬢様と吉崎勇様をお連れしました」
「うむ」
来栖昭夫さんは軽く頷くと立ち上がってオレを見た。
「吉崎勇君だね、孫いつもお世話になっているそうで……」
「あ、いえ…… 委員ちょ、じゃない来栖さんにはオレの方こそお世話になりっぱなしです!」
オレは慌てて首を振った。
って言うかオレの方が迷惑かけてる事が多いよな、テストにしろ何にしろ……
「さぁ、椅子に座って待っていなさい、もう1人来るから……」
もう1人、それは言わなくとも分かっている、
オレが真中のパイプ椅子に座ってすぐ、その人は現れた。
「こんにちは」
やはり仁さんだった。
「今日はお話があると聞いてきたんですけど……」
「ああ、君に聞きたい事があってな」
「それってこの前出したゲームの事ですか? でも彼は?」
それがオレにも分からない、
確かにゲームの事で呼ばれるだろうと思っていたけど、来栖さんが『お祖父さんがオレと話したい』と言って来た所が引っかかっていた。
仁さんを見た時、彼が言葉巧みにお祖父さん重役の人達を操ってオレに恥をかかせようとしたのかと思ったけど、今の会話からするとその考えは全く違ったようだ。
「私が呼んだんだ。彼にも話したい事がある」
「そうですか、分かりました」
すると仁さんはオレの隣りに座る、
お祖父さんは深く息を吐くと間を整えた。
「さてと、今日君達に来てもらったのは先ほど仁君が言った通り、先のコンテストで送ってもらった君達のゲームの事だ」
もう審査が終ったのか?
いや、それにしては早すぎる、仁さんがいつ送ったのかは分からないがオレのは結構後の方だ。
作品名:一緒にゲーム作りませんか? 作家名:kazuyuki