一緒にゲーム作りませんか?
新学期が始まった。
正直来栖さんと顔を合わせる事自体が気まずかった。
仁さんに何か言われてないだろうか、その事がオレの心に引っかかっていたが来栖さんはいつもと変わらなかった。
最初は本性を知っていていつもと変わらずに接してくれたのかと思ってたが、考えてみれば仁さんは自分が不利になるような事を言うはずが無く、校門を潜ろうとした時に『おはよう、吉崎君』と後ろから声をかけてくれた。
始業式に体育館ではこの世で最も眠くなる話ベスト3に入るだろう、校長先生の話しが終わり、教室に戻ろうとしていた時だった。
「吉崎君」
振り返ると来栖さんにオレは呼び止められた。
「ちょっと良いかしら?」
「どうしたの委員長?」
「うん、今度の日曜日…… 時間あるかしら? もしあるなら一緒にお爺様の会社に来て欲しいの」
「えっ? それって…… プラネットに?」
来栖さんは小さくうなづいた。
何でも彼女のお爺さんがオレと話をしたいと言う、
これはチャンスかと思った。
オレ達が作ったゲームが認められてそれを見たお祖父さんがオレを気に入り来栖さんの時期花婿に…… 何て妄想は3秒で消えた。
ゲーム関係で呼ばれるのは分かってる、
だけどそうなると真っ先に浮かび上がるのは仁さんだった。
もしや彼が何か言ってオレを陥れようとしているんじゃないかと思った。
重役の息子だからって何でもやって良いとは限らないけど、あの人は周囲の者達の信用を得て自分は手を汚さないと言う人間だ。何かあった時の為に逃げ道と言うか理論武装とか、そう言う段取りを用意しているに違いない、
「ダメかな? 用事ある?」
「えっ? ……ああ、いや、特に無いよ。大丈夫」
確かに勝ち目は無い、だけどオレは来栖さんの言葉にうなづくしかなかった。
仮に断ったとしてもきっと怪しまれるし、必ず向こうが何かして来るに決まってる、これを話せば香奈やつかさちゃんに迷惑がかかる、今回の事は2人には話すのは止めた。
もし話せば向こうは意地でもついて行くと言うだろう、香奈はああ言ってくれたがボロクソ言われるのはオレ1人で充分だった。
一週間後の日曜日、目覚ましより早く起きたオレは身支度を整えると駅に向った。
だけど約束の時間より早く来たオレよりも来栖さんと迎えの車が待っていた。軽く1000万は超えるだろう有名人が乗ってそうな黒塗りのベンツだった。
オレは駐輪状にチャリを置いて鍵をかけると車に乗ってプラネット社へやって来た。12階建ての奇麗で大きなビル、オレの近くにある黒い大理石の看板にはちゃんと『PRNET』と彫られている。
やっぱり日本有数のゲーム会社となると凄いなと心の底から思った。
「ちょっと待ってて、もう1人来るから…… あ、来た!」
すると1台の乗用車がこちらにやって来た。
オレ達が乗って来た車ほどではないだろうが結構高そうなオープンカーはオレ達の前で止まった。
「やあ、お待たせ」
ドライバーは仁さんだった。
少しキザなデザインのサングラスを外すとオレ達に挨拶をした。
彼を見た瞬間オレは来栖さんの待ち人が彼だと言う事が分かった。
「私達も今来た所よ、ねぇ吉崎君?」
「え、ああ、まぁ……」
オレが言うと仁さんは口の端を上にあげた。
一見穏やかで同じように見ている彼だが、来栖さんとオレを見る目が全く違う、明らかにオレの方には皮肉と敵意をたっぷりと込めていた。
「じゃあ車を置いてくるよ、先に会議室で待っててくれ」
それだけ言うと彼は車を走らせて去って行った。
「じゃあ行きましょう、受付はこっちよ」
「うん」
オレは来栖さんの案内でビルの中には入って行った。
作品名:一緒にゲーム作りませんか? 作家名:kazuyuki