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一緒にゲーム作りませんか?

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 待つ事数分、つかさちゃんから携帯が掛かって来た。
『時間枠を元に戻すのは考えてませんでした。さすが先輩です』
「多少無理があるかもしれないけど直せるかな?」
『あ、はい。少し直すだけで大丈夫です。あとは任せてください』
 つかさちゃんの声は凄く活き活きしていた。
 プログラムは彼女しか出来ない、ここからは彼女の腕の見せ所だった。
「よくやったわよ、勇」
「えっ?」
 オレは香奈の顔を見た。香奈は心の底からオレを褒めていた。
「当たり前でしょ、アンタが約束果たしたんだから…… 今回だけは認めてあげるわよ」
「……勝てるかどうかは分からないけどな」
 あの件さえなければオレ達3人は来栖さんも誘って面白おかしく出来たんだろうけどそうもいかない、
 今回は勝たなきゃいけない、来栖さんやこんなオレについて来てくれた2人の為に……
「ちょっとアンタ、まだそんな事言ってんの?」
「えっ?」
 香奈の目が釣りあがるとオレは反射的に一歩後ずさりする、
「例え勝ち目が無くたって、負けが決定しても戦うって一緒に決めたじゃ無い、もっと自分に信じなさいよ」
「香奈……」
 腕を組んで微笑する香奈とオレと目が合った。
 すると香奈は目を泳がせると一呼吸置いて言って来た。
「ま、まぁ…… もしアンタが負けて転校しよう物なら…… 私も転校する」
「はぁ? 何でお前まで?」
 香奈まで付き合う事無いだろうに、
 こいつは成績良いしゲーム好きとは言えオタクって訳でもない、
「べ、別にアンタ自身がどうなろうが知った事じゃないけど、知らない学校に行ってイジメめられて、自殺しよう物なら目醒めが悪いのよ!」
 縁起でも無い事言ってんじゃねぇよ、
 そりゃ中にはあるだろうけど、一部ってだけで実際はそうでもないだろう、ドラマやマンガじゃ無いんだから…… 多分、
「それに小父さん小母さん達だってアンタがいなくなったら悲しむし…… それにつかさちゃんや聖子や卓やお婆ちゃんだって…… えっと、それから……」
 こいつは必死で言葉を探しながら指を曲げた。
「と、とにかく、ここまできたら結果がどうなろうと突っ切るっきゃ無いわよ」
「もちろんだ!」
 オレは強く頷いた。
 ここにつかさちゃんがいれば同じ気持ちだっただろう、やれるだけの事はやった。後はどうなろうと後悔は無かった。

 それから2週間の時間が流れて夏休み最終日4日前、ついにオレ達の努力が形となった。オレの家ではつかさちゃんが持って来たパソコンの画面を3人で覗いていた。
 香奈がデザインしたキャラクターがオレの作ったシナリオ通りに実際に動いていると言う現実を目の当たりにした。
 感動…… としか言い様が無かった。自然と涙が出てきた。
 オレの隣りでは香奈も、一度デバグ(バグを修正する作業)をする際にプレイしたつかさちゃんもオレ達につられて泣いてしまった。そして俺達はゲームを郵便局に持って行って来栖さんの会社に送った。

 全てが終わった。
 まるで高校野球の3年生のような感覚だった。
 駅でつかさちゃんと別れ、バイトがある香奈とも別れたオレは1人で家に戻った。1人で部屋のベットに寝そべるとしばらくボーッとしていた。
「退屈だな……」
 本当なら夏休みの最終日は終わってない宿題を大慌てで片付けているのだが途中から諦めてゲームをやっていた。
 だけど今年はもう終わっていた。
 本当は香奈の宿題を写しただけなのだが、今年は事情もあるので結構優しかった。毎年1000円出して借りてたのが500円で貸してくれた。
「………」
 表では相変わらず蝉達が夏季限定の大コーラスを演奏してくれている中、オレは寝転がりながら机の上に手を伸ばすと今日までの事を思い出した。
 つかさちゃんと出会い、来栖さんにコンテストの事を聞き、香奈も手を貸してくれた。卓に言ったら絶対『リア充は死ね』とか『この恋愛セレブめ』とか言って嫉妬するに違いない、まさか現実にギャルゲーみたいな展開が起こるなんて思わなかった。 
「今日で夏休みも終わりか……」
 あと4日残っている8月のカレンダーを見ながら呟いた。みんな相変わらずの顔で登校するんだろうな、う思いながら今年の夏は終わりを告げた。