一緒にゲーム作りませんか?
「俺は補習で付き合えなかったからダチ達が頑張って仕上げてくれたんだ。俺達の自信作だ!」
そう言って取り出したのは卓達が作った18禁同人誌だった。
何のアニメかは知らないが魔法少女だろう、ピンクのフリル付きのミニスカートのワンピース、胸には大きな赤いリボンに星型のブローチが付いた赤い髪のツインテールの中学生くらいの少女が半裸であられもないポーズで描かれていた。
「お、おまっ! こんな所でそんなモン出すなよ!」
オレは動揺しながら周囲を見る、
幸い歩いている人間はおらず、車やバイクが通り過ぎるだけだがこんなの真昼間から出すモンじゃない事くらいオレだって分かってる、人に見られたらどうすんだ?
「気に済んじゃねぇよ、俺とお前の友情の証としてこれは渡しておく、楽しんでくれ」
嫌な友情の証だな……
オレに同人誌を押し付けるように渡すと笑顔でオレの左肩に右手を乗せ、並びの悪い歯を見せて握った左手の親指を突き立てた。
「じゃあ俺は行くわ」
卓はリュックを背負い直すと俺の横を通り過ぎた。
誰かに見られたら困るので急いでレジ袋の中に仕舞うと大急ぎで家に戻った。
家に帰ってくると汗だくになっていてシャツも下着も汗でぐっしょりになっていた。
仕方ないからシャワーを浴びて汗を流し、新しい服に着替えて荷物の置いてあるリビングへ、カフェオレを冷蔵庫に仕舞うとレジ袋から禁断の書物を取り出した。
「こんなの渡されても正直困るっつーの、何考えてんだあいつは?」
多分何も考えてないだろうと思った。
いや、ギャルゲーと同人誌の事しか考えてないだろうな……
「人生楽しんでるよなあいつも…… 毎度の事ながら…… って毎度の事?」
オレはテーブルの上に置きっぱなしにしておいたノートと同人誌を交互に見た。
「待てよ、これって……」
オレは携帯を手に取った。
話す相手は香奈でもつかさちゃんでも無くオレの悪友だった待つ事数秒後……
『ほいほ〜い! お待ちどう様! 貴方のアイドル江成・卓で〜すっ!』
いきなり殴り飛ばしたくなるような応答だった。
「卓、ちょっと良いか?」
『何だ? 金なら貸さないぞ』
「ちげーよ!」
欲しくないと言えば嘘になるが今はそんな事どうでも良い、
「ちょっと聞きたい事があるんだよ」
オレは口を尖らせながら尋ねた。
卓はサークルの仲間と供に同人誌を描いてる訳だから話作りのノウハウはある、年齢制限のある同人誌とゲームでは全然違うが話を聞く価値はある、
「お前さ、どんな感じで話のネタとか考えてんだ?」
『おお、何だ。早速読んでくれたのか?』
「えっ? ああ、それは……」
『いやぁ、勇! やっぱりお前は親友だぜ! 必ず分かってくれる奴だと思ったよ。やっぱりお前の居場所はゲームじゃなくて同人活動……』
「卓、オレもお前も忙しいんだ。そう言った話はまた今度と言う事にしてさ、要点だけ教えて欲しい」
話がややこしくなるので中断させる、数秒の沈黙が流れると卓は言って来た。
『そうだったな…… ってもなぁ、深くは考えた事は無いんだけどよ……』
「……ああ」
オレは固唾を飲み込む、
『やっぱ楽しんで描くのが一番だな』
「い、いや、そりゃそうだけど……」
残念ながら俺が聞きたいのはそんな答えじゃ無い、
『まぁ俺だけの答えかもしれないけど…… 同人誌はその元になったマンガとかアニメとか…… もしもこうなったらなって想像すんだよ』
オレは同人誌を見る、
あいつはこんな子供にこんなポーズをとらせ、さらにPTAから苦情どころか下手すりゃ警察沙汰になりかねないような事をする想像したのか?
そう考えるとオレはこいつとの関係を考えなければならなくなった。もしこいつが通報されるような事になったらオレは絶対他人のフリをしようと心に決めた。
『でもよ、やっぱり人に飽きられにくいが一番いいよな』
「えっ? どう言う意味だよ?」
『いやだからさ、マンガだろうとゲームだろうと一度見終えたりクリアしたら大抵しばらくはやらないだろ? もしくは売っちまうとか』
人にもよるがそれは分かる、
最近のRPGなどはクリア後に隠しダンジョンが出現したりアイテムを集めたり、ましてラスボスより強いボスを倒したりなど工夫が成され何度でも楽しめるようになっている、
こいつがやってるギャルゲーはキャラによってエンディングが違う、RPGと違い選択肢とフラグ次第でグッドエンドかバッドエンドが決まる、
ただ条件付きでクリアしなければ告白されないキャラクター(例えば狙ったヒロインが別のヒロインを先に攻略しなければ告白されない等)が居るようなので、一度セーブして分岐点などを探し、CGやイベントを回収するのが醍醐味だと卓は語る。
『まぁギャルゲーは一種のパラレルワールドみたいに楽しめるから面白いんだけどな、一直線のRPGと違って』
「ほっとけ!」
そりゃお前がレベル上げやダンジョン歩き回るのが面倒なだけだろうが、
RPGの中にはギャルゲーみたいなのがあって主人公以外の女子キャラクターの高感度を上げて告白されるってのもある、確かに流れはラスボス倒すまでは同じだろう、だが選択肢でセリフやイベントが違うしエンディングも迎えるキャラ(隠しキャラも含んだ)の数だけある事は分かる、
作品名:一緒にゲーム作りませんか? 作家名:kazuyuki