一緒にゲーム作りませんか?
大抵のゲームのラストを上げてみる、
主人公は世界を救った勇者として語り継がれる、滅ぼされた国を元に戻す為に王位を継ぐ、使命を終えて元の世界に戻る等など、中には10種類以上もエンディングがあるゲームも存在する、
しかしオレ達の作るゲームはそんなにたくさんのラストを書き込めない、エンディングは1つで、とにかく感動できる奴が良い、そうこうしている内に昼になった。
「時間が無いとは言えちゃんと食べなさいよ」
香奈は昼飯を作ると家を出ていった。
「ふぅ、一休みするか……」
考えたって出ない物は出ない、オレは香奈が作った飯を食べ始めた。
しかし香奈の奴、いくら日本が不景気だからって家の食卓まで不景気にする事無いだろうに、
もう少し豪勢にしてもいいだろうに、沢庵と切干大根と鯵の煮物って……
とりあえず口の中に飯を掻っ込むと食器を台所に片付けて冷蔵庫を開けた。
「あ、やべ……」
オレはいつも飲んでるカフェオレを切らしてたのに気付いた。
あれが無いとオレは集中できなかった。大人で言う所の酒や煙草みたいなモンだ。未成年が言う例えじゃ無いけど……
「仕方ない、買いにいくか」
オレは財布を持って外に出た。
外に出た瞬間モワッとした空気がオレの身体を包んだ。
「あっち〜」
オレの額から汗がにじみでた。
今までクーラー効いてた部屋にいたから余計にだろう、本気で人類は地球温暖化に付いて考えるべきだと思った。
「しかたない、ちゃっちゃと行くか」
オレは自転車でスーパーに向かった。
普段なら香奈のバイト先のコンビニに行く(あいつが売上に協力しろってうるさいから)のだがこっちの方が近い、時間も無い事で今回は我慢してもらおう、
入り口の所にあった籠を手にとってお目当ての物を2本ほど買うとレジまで持って行き、パートの小母さんに金を払ってレジ袋をぶら下げながら表に出た。
買い物をチャリの籠に入れて帰ろうとしたその時だった。
「おーい、勇!」
振り向くと長袖の青と白のラインのシャツにジーパンでリュックを背負った卓がやって来た。こいつ夏でも長袖なんだよな、ただでさえ暑いのにこいつを見てると余計暑くなる、
「どうした? 補習じゃなかったのか?」
「おいおい何言ってんだ。明日からお盆だぜ」
お盆は教師達は帰省するので補習は無いと言う、だがこいつの目は何時になく強い輝きを放っていた。長い付き合いなのでその理由は分かる、
「これからダチと打ち合わせなんだ。明日から始まる聖戦のな!」
「早い話がコミケだろ、ったく毎年毎年……」
ただ有明に行って買い物してくるだけだろ、何が聖戦だ。
「お前明日暇か? なら一緒に行かないか? きっと楽しいぜ!」
「行かねぇよっ!」
オレは全力で否定する、
こんなフライパンの上にいるような猛暑の中をどうして高い金払ってまで遠出しなきゃいけないんだ?
大体こいつは売る側だから行かなきゃならないかもしれないが、オレの場合(百歩譲って行ったとしても)は買うだけなのだから無理して行く必要は無い、通販でも充分だ。
それを言うと……
「馬鹿野郎っ! 現地に直接行って買うのが良いんだろうが! お前は今まで何を聞いてきたっ?」
お前が勝手に喋って来たんだろうに、こいつは暑苦しい顔をさらに近づけて来た。
「オレだって色々忙しいんだよ。だから有明だろうとどこだろうと行けないよ!」
「忙しいったってゲームだろ、暗い青春してんなぁ」
こいつに言われると本気で腹が立つ、自分だって似たようなモンだろうが、
オレは気持ちを抑えて一間置くとオレは言った。
「それより打ち合わせじゃなかったのか?」
「あ、そうだそうだ。折角会ったんだ良い物やるよ」
会いたくて会った訳じゃ無いけどな、
卓は背負っていたリュックを降ろすとチャックを開いた。
作品名:一緒にゲーム作りませんか? 作家名:kazuyuki