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一緒にゲーム作りませんか?

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 その日の昼休み、オレは暇潰しに図書室へとやって来た。
 別に本に興味がある訳じゃ無いが授業開始までの時間は適当に校舎中を歩いて時間を潰す事に決めている、さすがにオレも学校内じゃゲームしはしない事にしているのだ。
 ちなみにゲーム機はオレの下駄箱の中に隠してある、没収されたら困るしな、
「……ん?」
 本棚を見ながら歩いていたオレの目に1つの本が映った。
「ゲームの作り方?」
 そんなの置いてあるのか、
 気がつくとオレは本に手を伸ばしていた。しかし突然別の手が伸びてきて同じ本を取ろうとした。
「あっ……」
 振り向くとオレの隣りにはいつの間にか1人の女子生徒がいた。ツインテールに眼鏡をかけた来栖さんより一回り小柄な子だった。
「あっ ごめんなさい。どうぞ」
 彼女はオレに本を譲ろうとする、しかしオレは片手を振って断った。
「ああ、別にいいよ。オレはただ暇つぶしに読もうとしただけだから、別に見なくても良いんだ」
「そ、そうですか? じゃあ……」
 女の子は手を伸ばして本を取る。
「君、ゲーム造るの?」
「え、ええ…… ゲーム好きですから」
 女の子はその本をギュッと握り締めた。

 オレ達は図書室のテーブルに着いて話し合っていた。
 彼女の名前は麻紀つかさ、今年入学したばかりの1年生だった。
「ゲームは私の趣味なんです、あんまり人に自慢できる趣味じゃ無いんですけど……」
 つかさちゃんはよほど恥ずかしいのかオレの顔を見ようとしなかった。
「そうでも無いよ、オレの幼馴染だってゲーム好きなんだ。女の子がゲームやっちゃいけないなんてただの偏見だよ」
「そ、そうですか? 嬉しいです」
 つかさちゃんは顔を明るくした。
 しかし同じ女子だと言うのに随分香奈とのギャップがあり過ぎる、あいつはすぐ怒るしやかましいが彼女はその逆だ。
 一体この差はなんだろう、それこそ偏見かもしれないが……
「って言うか、本当にパソコンでゲームが作れるの?」
 そりゃゲームはパソコンで作られるってのは分かってる、
 だけど普通に売られてる家庭用のパソコンで作れるのかどうか疑問だった。
「それはもちろん、普通にインターネットが出来るパソコンならなんでも…… ただやる事が多いから慣れるまで大変ですけど」
「よく知ってるね」
「私の両親はプログラムの仕事をしてるんです、そう言った本が家にたくさんありますから…… それに最近じゃ自分でゲームを作れるゲームもあるじゃないですか」
「そう言えばオレも買ったな、面倒になって押入れに入れたままだけど」
 オレが苦笑するとつかさちゃんも微笑した。
 つかさちゃんは手に持っている本を見降ろした。
「ゲームを作るって私の夢なんです。始めてエンディングを見た時は凄く感動しました」
「分かる分かる、その気持ち凄く分かるよ」
 オレも始めてゲームクリアして泣いた記憶がある、
 あれはマジで感動モンだ。
「この気持ちを人に分けてあげたくて…… ゲームで人を幸せにするのが私の夢なんです、変に思われるかもしれませんけど……」
「そんな事無いさ、すごく良いよ」
 オレがそう言うとつかさちゃんは苦笑した。
 すると今度はつかさちゃんが尋ねてきた。
「先輩もゲームするんですよね? よかったら一緒にゲーム作りませんか?」
「えっ?」
 オレは正直迷った。
 確かにゲームは好きだが作るとなると話が違う、さっき話したゲームを作るゲームはある程度設定やプログラムが出来ていて比較的楽に作る事が出来る、
 しかし彼女はパソコンを使って0からやろうとしている、となるとただでさえ面倒な作業が余計面倒な事になる、
「オ、オレは…… いいや、他を当ってくれ」
「そうですか……」
 つかさちゃんは気を悪くした訳ではなさそうだが俯いて肩を落とした。そう思っていると予鈴が鳴り響いた。
「いけない、次の時間体育だった」
 つかさちゃんは本を持って立ち上がるとオレに一礼した。
「じゃあ先輩、失礼します」
「あ、ああ」
 オレは手を振って彼女の姿を見送った。