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一緒にゲーム作りませんか?

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ステージ1,ゲームの始まり


 長い坂道を登り終えるとやって来たのは私立情彩学園高校、設立13年の男女共学の進学校がオレ達の学び舎だった。
 毎度毎度思うのだがなぜ学校と言うのはいちいち高台に造られなければならないのかと思う、
 場所が無いとか災害時の為だとか色々理由はあるのは分かるし、そりゃ教師の方々は車があるから楽だろうけど、少しは生徒の気持ちを考えてもらいたい物だ。雀の涙ほどでも構わないから、

 しかも今日は憂鬱だった。
 何しろ先日行われた小テストが還って来るからだ。
 オレは勿論勉強する訳がない、と言うか勉強をする気など蟻の体重ほども無い、全くの一夜漬けだからだ。
 テストを貰って自分の席に帰ってくる、
「うう〜〜……」
 こう言うのを『困った時の神頼み』と言う、
 だが何時までも点数を確認しない訳にも行かないのでオレはゆっくり目を開いた。
「32点…… よし!」
 赤点ギリギリ、だけどオレにとっては合格点だ。
「はぁ……」
 するとオレの隣りにまるで御通夜の様な顔をしながら1人の男子生徒が戻って来た。
 こいつは中学からの知り合いで名前は江成卓、背は俺より少し高く、短めの茶髪に眼鏡をかけたオレの友人である。
「卓、お前赤点だったか?」
「ぐっ!」
 図星だったようだ。当たってもハワイ旅行も行けないのが泣けてくる、
 こいつもオレと同じ成績不良者だった。しかもこいつは両親から今度赤点を取ろう物ならコレクションの漫画やゲームを捨てると言われていたらしい、
 さらに卓自身もゲームをやっているのだが、プレイするのは年齢制限のあるギャルゲーで、読んでる漫画も18禁の同人誌だった。
 こいつ自身W・О・C(ワールド・オタク・コミュニティ)とか言うサークルに入っていてコミケに参加している、
「お前は何点だった?」
 そう言われてオレはテストを見せる、
 すると卓は歯をギリギリと軋ませながら肩を振るわせた。
「畜生っ! 世の中には神も仏もいねぇのか? オレはお前を親友だと思ってたのによぉ! 勇ぃ〜っ!」
 机に両腕を組んでうつ伏せになりふてくされてしまった。赤点ギリギリのオレに八つ当たりしても仕方ないだろうに…… 
 あ、そうそう、もう気付いていると思うけど、こいつが言った『勇』ってのはオレの名前だ。

 本名は吉崎勇、9月30日生まれの天秤座のA型、
 親父はごく普通のサラリーマンでお袋は専業主婦、だが今は家におらず去年の9月頃に親父が長野に単身赴任が決まった時にあっさりとついて行ってしまったのだった。
 おかげでオレは1人暮らし、朝から晩までゲーム三昧の気軽な毎日を送っている…… のならまだ良かった。
 何故ならお袋が家が近いからと言う理由で香奈に頼んでオレの面倒を有料でみさせているのだ。
 つまり香奈は朝オレを起こし、朝と晩の飯を作って家を掃除すると言う家政婦みたいな事をやっている、
 しかも支給された生活費は全て香奈に預け、管理も任せて余ったら香奈のバイト代にプラスされると言う何とも理不尽な条件が付いている。
 この事を以前卓に愚痴った事があったのだが、あいつは同情する所かオレの胸倉を持ち上げて『幼馴染が朝起こしに来てくれて飯作ってくれるなんて最高のシチュエーションじゃねぇか! たかが生活費削られるなんざ屁でもねぇだろ! ぶっ殺されてぇのかこの野郎っ!』と言いながらマジで号泣していた。
 所詮人間なんてそんな物かとオレは実感した。親父もお袋も自分の息子よりも香奈の方を信頼していて、さらに少し前にいつオレと結婚させようとか、新婚旅行はどこにするとか言って盛り上がっていた。
 人の人生を勝手に決めないでもらいたい、オレにだって好きな人はいるんだ。
「あ〜あ、親に言い訳考えなきゃなぁ……」
「頑張れよ…… あっ?」
 そんな事を言っていると1人の女子生徒がテストを貰って自分の席に座った。
 腰まであるストレートに切り揃えた前髪、雪の様に白い肌に宝石のように輝く青い瞳の彼女はクラス委員長の来栖聖子さんだった。
「委員長はいいよなぁ、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、おまけに家が金持ちと来てる、そんなパーフェクト超人がリアルに存在してるなんてなぁ……」
 卓はため息を零した。
 彼女は校内でも5本の指に入るほどのアイドルだった。そして日本を代表する有名なゲーム会社『プラネット』の社長の孫娘でもあった。オレもそこのブランドのゲームは大好きで新作が出れば必ず購入している、

 彼女は入学してから一週間でファン倶楽部が結成されたと言う噂があり、狙っている男は少なくない、
 ちなみにオレもその内の1人で、さっき話したオレの好きな人が彼女だった。
 だがオレには告白するだけの勇気が無かった。実は彼女にはとある伝説が存在するのだ。
 来栖さんは1年の頃から上級生や同級生、さらに噂では教師からも告白を受けた事があるらしいが、その勇者達は全て玉砕している、
 男子生徒の間じゃこれを『来栖聖子告白玉砕伝説』と呼んでいる、そのまんまだが……
 玉砕した男子達はまるで恐怖のあまり髪の色が変わったフランスの貴族夫人と言うか、燃え尽きた昔のボクシング漫画の主人公のように真っ白になり、中には学校を辞めちまった奴もいるとかいないとか……

 そんな訳で最近じゃ断られるのが怖くて告白する奴の噂を聞かなくなった。
「イケメンでもない、エリートでもない、スポーツマンでもない…… 一体委員長の好みってどんなんだ?」
 確かに気になるな、後残るは金持ちか強い奴って事になる、
 想像してみる、告白した瞬間『付き合いたければ私を倒してください』とか言っていきなりリアルファイトを挑んで来る…… ってそんなアホな、
「はぁ、いずれにしろ委員長の旦那になる奴は羨ましいなぁ……」
 それはオレも分かる、
 一方来栖さんは隣りの席の香奈と話し合っていた。あいつも成績良いから話もはずむだろう、
 正直オレは香奈が羨ましい、どう言う経緯で仲良くなったのかは知らないが去年から香奈と楽しそうに話していたのを見た事がある、
 何故出会いと言う物にはこれほどの差があるんだろうか、卓の言う通り世の中には神も仏も無い、もし存在するのならクレームの1つや2つ付けても罰は当たらん。
「オレ達じゃ到底手が届かねぇ高嶺の花だ。それよりお前も一緒に二次元に嵌まろうぜ、オレ達W・О・Cはいつでも歓迎するぜ」
 卓はオレの肩に手を乗せる。同情のつもりだろうが残念ながらオレにはそっちの趣味は無い、
 こいつは時々こうしてオレを同人の道に引き込もうとしているがその度に断っている、
 高嶺の花ってのは否定しないが他人に言われると正直ムカついた。