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「勇っ!」
 顔を上げると公園の入り口には香奈が立っていた。
「……お前」
「この場所を教えてくれたのは香奈ちゃんですよ、行くとしたら多分ここしかないって」
 オレは昔から辛い事があると公園にやって来ていた。
 今ならゲーセン行ってパンチマシーンを殴る事ぐらいは出来るが子供の頃は金が無くてここくらいしか行く所が無かった。
「どうしたのよ? 何があったの?」
 香奈はオレの側に近づいてくる、
「オレ、どうしたら……」
 オレは今日起きた事を2人に話した。
「……そんな事が」
「最っ低……」
 香奈は拳を握り締めた。
「それで思わず言っちまったんだ。コンテストで負けたらオレは転校するって」
「そんな約束守る必要無いわよ、そいつが約束を守る保障なんてどこにも無いじゃない!」
 そうだろうな、だけどそれしかなかった。
「とにかく聖子に連絡する、そいつ上手く正体隠してるみたいだけど、何とかして……」
「待って!」
 携帯を取り出そうとした香奈をつかさちゃんが止めた。
「香奈ちゃん、そんな事をしてもその人が引っ込むと思う?」
「だけど!」
「仮に引いたとしてもただで済むとは思わないわ、きっと先輩に酷い事をして来るに決まってる、しかも自分の手は一切汚さずにね」
 よく分かるな、元虐められっ子の感って奴か?
「じゃあどうするの?」
 香奈が尋ねる、
 するとつかさちゃんはオレ達に言って来た。
「私、もう一度プログラムを見直します、そして少しでもおかしい所があれば話し合ってなおしましょう、先輩と香奈ちゃんは急いでラストを仕上げてください」
「ちょっと待って、つかさちゃんは? 1人で大丈夫なの?」
「プログラムは殆ど終わってる、それに夏休みも始まったばかりなんだし、私達が力を合わせればどうって事無いでしょう?」
 つかさちゃんは自分に手を当てる、
 香奈はそんなつかさちゃんの姿を見ると口の端を上にあげた。
「そうね、結果はやってみなきゃ分からない物ね」
 2人はやる気だった。それはオレにも同じだ。このままじゃ終わりたくないって思ってる、
 だけどまだ立ち上がる事が出来なかった。オレはつかさちゃんに尋ねる、
「……勝てるかな?」
 来栖さんの話じゃ専務の息子だからゲームの良し悪しは分かる、
 さらにオレにしたようにいろんな人からゲームを奪ったり買ったりして良い所だけを繋ぎ合わせて修正してるはずだ。
 ましてやゲームの審査をするのは父親や会社の社員達だ。どう見たって武が悪い。
「正直言って勝てる自信が無い……」
「ちょっと勇!」
「そうですよ、勝ち目なんて初めからありません」
 つかさちゃんはあっさりと断言する。
「先輩、もしかして先輩ってボスと戦ってる最中に勝ち目が無いからって…… リセットボタン押して必死でレベル上げるタイプですか?」
「えっ?」
「私は違いますよ、レベルが低いままで負けが決定しても最後まで戦います、最近じゃ戦績とかそう言うのを確認できて…… 負けた回数を気にする人がいますけど、私は気にしません。例え負けの数がカウントされていても私は気にしません。だって頑張った証拠じゃないですか」
 つかさちゃんはニコリと笑った。
「……そうね、私もそっちの方がいいかな」 
 すると香奈はオレに手を伸ばした。
「テレビでもオタクはキモいとか犯罪者予備軍とか騒がれてるけど、私は社会的立場や信用とか…… そんなのにぶら下がってる奴等の方がよっぽど最低な犯罪者予備軍だとしか思わないわ、そんな奴に逃げちゃダメよ!」
「一緒に戦いましょう、ゲームはまだ始まったばかりですよ、自分自身と自分が作り出したゲームを信じてください」
「お前ら……」
 2人の顔を見ると2人は微笑して頷いた。
 オレの右手がつかさちゃんから離れるといつの間にか香奈の手をつかんでいて、引っ張られるまま立ち上がった。
「悪のラスボス退治と行くわよ」
「ああ」
 オレは首を立てに振った。
「先輩、ちょっと良いですか?」
「え、何?」
 するとつかさちゃんはオレの前に立つと顔を覗き込んだ。
「香穂ちゃんにが先輩に平手打ちをしたのって、右頬ですよね?」
「え、うん…… でもそれはオレが悪いんだ」
「そうよ、誤解もあったんだしもう良いわよ」
「いえ、そうじゃ無いんです…… 歯を食い縛ってください」
「えっ?」
 するとその瞬間、つかさちゃんの左手の平手打ちがオレの左頬に炸裂した。
「痛っ?」
「つ、つかさ…… ちゃん?」
 香奈は呆気に取られた。
 まさかつかさちゃんがビンタするなんてオレでも思わなかった。
「これでおあいこです。香奈ちゃんを泣かせる人は先輩でも許しません」
 つかさちゃんはそう言いながら右目を瞑った。
 本当に想定外の事をする子だなとオレは本当に感心する。だけど今ので完全に目が覚めてやるべき事を見つけた。
 もうオレ達に言葉は要らなかった。オレはもう迷わない、相手が何だろうとオレは最後まで戦う、例え大事な者や場所を失おうともだ。