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 オレは部屋のベットで腕を組んであお向けに寝ていた。すると階段を乱暴に駆け上る音が聞えると扉が開いた。 
「ちょっと勇っ…… って、いるんじゃない」
「香奈か…… 何か用か?」
 オレは体を起した。
「あ、そうそう、つかさちゃんに聞いたわよ、ストーリー換えるんですって? 何考えてんのよ?」
 つかさちゃんは香奈に話したのか、
「別に、あのままじゃ優勝できないって思っただけだ。お前だって賞金欲しいって言ってたじゃないかよ?」
「それは、そうだけど……」
 元々そう言う約束だし、賞金がもらえれば文句は無いはずだ。
 香奈はそう言われて少し戸惑うがやがて口を開いた。
「だからって、素人の私達がいきなり狙える訳ないでしょう、別に佳作だって……」
「佳作じゃダメなんだよ!」
 オレは思い切り叫んだ。
 香奈は肩をビク付かせてたじろいだ。
「な、何よ、怒らなくたっていいじゃない」
 オレはベットから起き上がると香奈を見る、
 香奈は少し怯えた感じだった。今までオレが強く言い返した事が無いから対応に困ってるんだろう、いつも泣かされてたのはオレだったからな、
「自分が言っただろ、中途半端はしないって、そう言ってるお前の方がよっぽど半端なんじゃないのかよ?」
「私のどこが半端だってのよ? 勝手に内容変えられるとプログラムしてるつかさちゃんに迷惑が掛かるって……」
「つかさちゃんは無理なんて一言も言ってなかった! 嫌なら断れば良かったんだよ!」
「アンタね……」
 オレが言葉で香奈に言い返せるなんてこれが最初で最後だろうな、
「大体お前は途中から入ったんだろ? 文句言われる筋合いはねぇよ!」
「なっ?」
 今のオレの言葉で香奈は俯いたまま両肩を震わせた。
「私が何だって? もう一辺言って見なさいよ!」
「何度だって言ってやるよ、お前は途中から入ったんだから余計な口出しすんなって言ったんだ! 嫌ならとっとと止めろ!」
「バカッ!」
 香奈は右手を振るってオレに平手打ちをかました。鈍い音と供に鈍い痛みが左頬に走る、
「何す……」
 香奈の顔を見た途端、オレは何もいえなくなった。
 香奈の吊り上がった瞳には涙が浮かんでいた。人前で泣かないはずの香奈が泣いていた。オレが泣かしたのか?
「……っ!」
 香奈は一言も言わず、まるで逃げるように部屋を出ていった。
「痛ぅ……」
 オレは左頬を抑えるとベットに腰を下ろした。
 以前香奈をギャフンと言わせてやりたいと思ったと言った。ギャフンとまで行かなくとも口喧嘩で始めて勝った。
 だけどあまり良い気分じゃなかった。
「本気で殴りやがって……」 
 パーよりグーの方が確かに破壊力があるって言うけど、今回はパーの方が痛かった。色々な意味で……
 確かに香奈には悪い事をしたと思う、つかさちゃんにだってそうだ。だけどオレは悪くない、オレにだって譲れない物くらいはある、そう思いたかった……

 結局それから何もする事も無く夜になった。
 電気も点けてないので部屋中真っ暗だがそんな事気にしちゃいなかった。今のオレにはお似合いだった。
「何々だよ…… 一体何の為に……」
 何だか一気にどうでも良くなった。
 ゲームを作り初めてまだ数ヶ月だけど確かに面白さを感じていた。そりゃ確かにアイデアが出てこなかったり煮詰まったりして苦しい事もあった。
 今度つかさちゃんにパソコン教わって本格的にそう言った仕事を目指すのも悪くないと思い始めていた。
 それがあの男の一言で全てが壊れてしまった。大好きだった物がどうでもよくなってしまった。