一緒にゲーム作りませんか?
「くっ……」
オレはその場に座り込んだ。まだ怒りは治まらないが頭の方は冷静になってきた。
「……絶対、負けられない」
仁さんの顔を思い出した。
上辺だけが良くても内心は人を見下し、会社が欲しいだけで来栖さんを自分の物にしようとしているあの男をオレは許す事は出来なかった。
勝てば来栖さんを諦めると言うがオレは負けたら学校を転校しなければならない、正直親父達に何て話せば良いか分からないが少なくともオレがやるべき事はただ1つだけだった。
「作るか……」
オレはノートを持って自分の部屋に急いだ。
ノートを見直して話を見直す、言われてみれば確かにどこかで見た様なイベントばかりだ。
少し直す必要があると考えたオレは携帯電話を手に取ってつかさちゃんに話した。
『えっ、話を書き直す? これで良いって決めたじゃないですか』
「全部とは言わない、できれば直せる所だけ直して欲しいんだ」
『直した話はあるんですか?』
「いや、まだなんだけどさ…… あんまり時間は掛からない、必ず書くから頼む!」
『……分かりました。じゃあ頼みますね』
通話が切れた。
「よし……」
オレはシャーペンを持った。
それから時間が流れた。
「……駄目だ!」
オレは消しゴムで乱暴にノートを消す、アイデアが出てこなかった。
確かに考えてポンと出てくるなら誰も苦労はしないけど今回はいつもと違った。集中すればするほど意識すればするほど仁さんの顔が浮かんでくる。忘れようとしても仁さんのあざ笑う顔が邪魔をして思うように進まなかった。
オレは首を横に振って平常心を取り戻すと目の前の事に集中した。基本は出来てる、後はこれに少し手を加えれば良いだけだ。構成の際に切り捨てたアイデアがあるのでそれを使えば良いだけだ。
数時間後、オレはペンを置いて一階にあるファックスに向かった。
「あ、つかさちゃん? 今送信するから」
携帯電話で連絡を入れるとファックスで送信した。
「これでよし…… ん?」
最後の一枚を送信した時、つかさちゃんから電話が来た。
『あの…… 先輩? これを直すですか?』
「えっ?」
『何か…… おかしくなりません?』
オレはそれも分かっていた。
書けば書くほど話との辻褄が合わなくなったり支離滅裂で訳の分からない展開になってしまった。
「そんな事言わずに頼むよ!」
『でも私的には今までのシンプルな方が……』
「試してくれたっていいだろっ!」
『ッ?』
つかさちゃんの引いた声でオレは我に返った。
『……ごめんなさい、少し試してみます』
「あっ!」
オレは慌てて弁解しようとするがつかさちゃんの携帯の方が先に切れてしまった。
しばらく通話が切れた携帯を耳に当ててボーッとしていたがやがて空っぽだったオレの心に段々イライラが溜まってきた。
作品名:一緒にゲーム作りませんか? 作家名:kazuyuki