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一緒にゲーム作りませんか?

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「全く、勇のアホタレ! 今度やったら絶対東京湾に沈めてやるわ!」
 香奈はまだ怒りが収まらなかった。
 沸騰したヤカンのように煙を噴かしながら不機嫌に体を洗う幼馴染をつかさは湯舟に浸かりながら苦笑する、
「で、でも考えればバスタオル届けてくれただけなのよね、事故なんだからそこまで……」
「甘いわよつかさちゃん、女の子は着替えや入浴を覗かれたら殺したって文句は言われないわよ!」
「……あはは」
「はい、今度はつかさちゃんの番よ」
「うん」
 体を洗い終えた香奈は湯舟から出たつかさと交代、香奈が湯舟に浸かるとつかさはボディソープとスポンジに手を伸ばした。
「つかさちゃんって、色白いよね。」
 香奈はつかさを頭から見下ろす、つかさは恥ずかしそうに頬を朱に染めて肩を窄めた。
「そ、そうかな?」
「つかさちゃんって中学時代モテたでしょう。」
「ええ? そ、そんな事無いよ……」
「何言ってんのよ。正直に言いなさぁい!」
 香奈は湯舟から身を乗り出してつかさに抱きついた。
「きゃああっ? か、香奈ちゃん!」
「ああ〜ん、つかさちゃんって可愛い〜」
「へ、変な事言わないで離れてよ〜っ!」
 まるで子猫のように2人はじゃれ合った。

 風呂から上がった2人はあらかじめ用意したパジャマに着替えると髪が長いつかさはドライヤーを、香奈はタオルで拭きブラシで髪形を整えた。
 そしてつかさに先ほどの質問の答えを聞いた。
「本当の所はどうなの? つかさちゃん人気あったんじゃないの?」
「だからそんなの無いって、そう言う香奈ちゃんは好きな人いないの?」
「えっ、私? 私は……」
 香奈が考えるとつかさは言う、
「吉崎先輩は?」
「んなっ? 何言ってんのよ!」
「えっ、違うの?」 
「当たり前でしょう、誰があんなゲームオタク……」
「私もゲームオタクだけど」
「あっ……」
 目を背けたつかさに香奈は慌てて両手を合わせて謝罪した。
「ゴ、ゴメン、別につかさちゃんの事いった訳じゃ無いの、ただあいつは甲斐性無しって言うか、小さな頃からバカな事ばっかり……」
「先輩の事、よく知ってるのね」
「そ、それは…… 幼馴染だから……」
「ふふっ」
 つかさはクスっと笑う、
 香奈はつかさの顔をまともに見る事ができなかった。
「でもね、私は好きよ…… 先輩の事」
「え?」
「もし香奈ちゃんが先輩の事を何とも思ってないなら…… 私が貰っても良い?」
「そ、それは……」 
 香奈はつかさから目を反らした。
 小さな頃からずっと一緒に居てそれが当たり前だと思っていた。自分が勇と付き合うなど考えた事が無かったので返答に困った。
 確かにつかさはしっかりしている、つかさが勇の面倒を見るようになれば安全だ。頭では分かっている、しかし『YES』と言えなかった。素直に首を縦に振る事が出来なかった。
「香奈ちゃん……」
 つかさはドライヤーのスイッチを切って洗面台の上に置くと両手を胸の辺りでグッと握り締めた。
「私ね、中学時代引きこもりだったの」
 つかさは語った。
 つかさは成績が良く学年でも上位だった。しかしそれに嫉妬した同級生からイジメに合い不登校になった。何日も学校にも行かず、部屋に閉じこもり両親にも迷惑をかけた。しかしそんな時に自分を慰めてくれたのがゲームだった。
 異なる種族や性格の者達が手を取り苦難に立ち向かい力を合わせ敵を倒す、バーチャルとは言えそんな主人公達が羨ましかった。
 そしていつか自分もゲームを作り自分の様な人間を元気付けたいと思い始めた。その為に両親に無理を言って1人暮らしを始めて城彩高校に入学したのだと言う。
「まともに会話して楽しいと思ったのって吉崎先輩が始めてだったの、だから…… あ、香奈ちゃんと会えたのも嬉しかったよ。」
「つかさちゃんっ!」
 香奈はつかさを抱きしめた。つかさは香奈の両肩が震えているのに気付いた。
「ゴメンね…… 本当に……」
「どうして? 何で香奈ちゃんが謝るの?」
 香奈は自分が転校しなければこんな事にならないと思った。側にいられれば自分が守れたかもしれないと思うと自分が許せなかった。
「香奈ちゃんは悪くない、ご両親の都合なんだから……」
「でも…… ごめんなさい……」
 つかさの2本の細い腕が香奈に背中に回る、しかし香奈は泣き止まなかった。
「……じゃあ、正直な事を教えて」
「えっ?」
「吉崎先輩の事、好き?」
 その問いに香奈は迷った。
 勇とは偶然転校した学校で席が隣りになり、授業中に落ちた消しゴムを拾ってもらった事で初めて会話をした。
 その3日後に日直で帰るのが遅くなり帰る途中で上級生にゲーム機を取られて虐められていた勇を発見、消しゴムの恩もあるので助けるとそれ以来は世話のかかる弟としか見ていなかった。
「好きかどうかは分からない…… でも、あいつの事は嫌いじゃ無い、これからもずっと一緒にいたい」
「……それが好きって事じゃない?」
「……そうね、私も勇が好きかもしれない」
「うん、分かった。じゃあ保留にしておく」
 2人は離れると互いの瞳を見つめ合い笑い合った。