一緒にゲーム作りませんか?
それからすぐ図書室に移動するとゲーム作りを再開した。
「ところでどこまで進んでるの?」
「えっ、どこまでって……」
オレはノートを見せるが実は大して進んでいなかった。
主人公が幼馴染を助ける為に旅に出るまでは作ってある、だがその次をどう書けば良いか分からなかった。
「でも最初だからあんまり強力な敵が出てくるってのもな……」
かと言って別の町へ行く途中の道を塞いでいるモンスターを倒したり、山賊や盗賊退治ってのもありふれてる、
「かといって凝り過ぎるのも問題だよな……」
オレは腕を組む、
とは言え1番の見せ所だ。なるべくインパクトがあるのが欲しい、しかし展開は引っ張る所だけ引っ張って置いたほうが良い。
「ん? ちょっと良い?」
「どうした?」
「ふと思ったんだけど…… キャラクターはどうすんの?」
「え、書いてあるだろ」
「いや、キャラの設定は書いてあるけど、デザインは?」
オレ達の間に刹那の沈黙が走る、
オレが書いたシナリオに出てくる町は確かに建物や店で売る物や人々のセリフは書いてあるが、それは文章だけでキャラクターの絵は無かった。
「アンタ達、もしかしてキャラクター作ってなかったの?」
「えっ、いや…… そんな事は……」
ノートには主人公とヒロインや仲間となる者達の設定は書き込んである、
主人公ヴァンは最初は普通の人間で敵に殺されるが、ヒロインで幼馴染のレイの力を借りて生き返り、騎士リックと神官フィリスを仲間にして旅立ち、途中敵の仲間だった魔導士ロイドが仲間にして攫われたレイを助ける為に旅立つ、
「そんなの作った内に入んないでしょう!」
「た、確かに……」
文章だけで良いって言うなら小説かノベルスゲームだ。
参った。オレは絵を書くのも苦手だ。つかさちゃんも絵心は無いと言う、
「はぁ、仕方ないわね…… 絵の方は何とかするわよ」
「えっ、本当?」
「香奈ちゃんって、絵がかけるの?」
「プロほどじゃ無いけどね」
香奈は胸を張る、
確かにこいつは絵は上手い、バイト先のコンビニで手書きのアニメキャラのポスターやポップを作っていて、よく母親と一緒に買い物に来た子供がそれを見て喜んでいたのを覚えてる、
何でも自分のパソコンのペンタブレットで描いて印刷しているらしい、
「絵は紙とペンさえあれば出来るからね、子供の頃はイラストレーターになろうとしてたのよ」
イラストレーターと言っているが本当は漫画家になろうとしていた。
だがこいつは絵が上手いのだが話を考えるのが苦手で行き詰まってしまいリタイヤしてしまった。
絵の上手さを生かしてイラストやキャラクターデザインなどの大会にそっち方面に応募を続けている。もちろん賞金が目当てだが……
「あれ、もうこんな時間?」
すると香奈は時計を見ると椅子を蹴って立ち上がった。
「いけない、私そろそろ行かないと」
「ん、何だバイトか?」
「そうよ、そんな訳で私帰るわね。ちゃんとキャラクターは作っておくから」
そう言うと香奈は荷物をまとめて帰っていった。
「香奈ちゃん、アルバイトしてるんですか?」
「ああ、あいつん家結構貧しいんだよ」
あいつは婆ちゃんと2人暮し、婆ちゃんの年金生活の邪魔にならない為に中学の頃から学校側に許可を貰ってアルバイトを始めていた。
ちなみにオレの家のアルバイト(オレを起こして飯を作りに来る)を始めたのは去年からだった。
「そうだったんですか……」
3年前、香奈の母さんは元々体が弱かった上に香奈を養う為に働いて体を壊して入院して他界した。
その時の香奈は今でも覚えてる、葬儀中は泣く事は無かったが終わった後にあいつは家の庭で泣いていた。
作品名:一緒にゲーム作りませんか? 作家名:kazuyuki