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一緒にゲーム作りませんか?

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 時間が経つのが早い物で夕方の5時になると勉強会はお開きとなった。来栖さんは帰る時に……
「何かあったら遠慮なく連絡してね」
 と言って携帯の番号を教えてもらった。
 世界を救う秘宝よりも一国の王様になるアイテムより凄いお宝をオレはゲットした。これだけは絶対に何があっても消すつもりは無かった。来栖さんが携帯変えない限りは……
 この瞬間、もう赤点取っても良いと思ってしまったがやがて現実を思い出した。
「約束したんだ!」
 そう、オレは必ず赤点は取らないと誓いを立てた。
 正直自分でも情けないと思ってる、だけど来栖さんを悲しませる訳にはいかないし、香奈も手伝ってくれたのでオレには期待に堪える義務がある。オレは決して恩知らずでも恥知らずでも無い!
「やるぞ!」
 オレは意気込んで机に向かった。
 正直言ってオレ1人じゃどうしようもなかっただろう、だけど香奈のノートを写したのがあるし、何より来栖さんの教え方が良かったので勉強は先に進んだ。
「ん?」
 するとオレの携帯にメールが届いた。
 緑の服を着た左利きの主人公のゲームのフィールド音楽の着メロ、これはつかさちゃん用に登録した物だった。
『調子はどうですか? 何の役にも立てませんけど頑張ってくださいね』
「つかさちゃん……」
 彼女も心配してくれるんだな、
『ありがとう、つかさちゃんも頑張ってね』
 オレはメールを返した。
 学年自体違うつかさちゃんもオレを応援してくれた。
 姿は見えなくともオレを支えてくれる人達がいる、その人達がオレに力をくれた。
「よしっ!」
 両手で頬を叩くとシャーペンを手に取る、オレのやる気は120パーセントを越えていた。
 学校でもオレは休み時間を削り、昼食を食べながらもオレは勉強した。
 もちろん分からない所は教えてもらった。ただ学校じゃ恥ずかしいので夜にメールや電話で教えてもらい、香奈に聞きに行ったりもした。

 そして一週間後、
 ついにボスキャラ連続戦(期末テスト)が始まった。シャーペンと言う名の剣を持って悪戦苦闘の連続、回復魔法もサポートアイテムも無い、全て自分の体力と気力と知力だけで乗り切らなければならない、
 現れる計算問題や英単語などのモンスターを倒し、100満点と言うライフゲージの内30点以下ならゲームオーバー、一敗も許されなかった。
 限られた時間の中で培われた俺の知識なんてたかが知れてる、逆立ちしたって学年トップなんて取れるはずが無いがオレは出来る限りの事をするだけだった。

 数日後、
 全ての力を使い果たしオレはテストが帰ってくる間の試験休みを泥のように眠った。
 起きる頃には昼を回っていて携帯には香奈、来栖さん、つかさちゃんからメールが届いていた。
『勘違いすんじゃないわよ、心配してメールしたんじゃないからね』
『お疲れ様、今日は何も考えずにゆっくり休んでね』
『ご苦労様でした。明日からまた頑張りましょうね』
 オレは3人にそれぞれ返信すると再び目を閉じた。結局その日は一日中眠って過ごした。

 そして翌日、
 いよいよオレの答案が返ってくる日だった。
「次、吉崎!」
「は、はい」
 名前を呼ばれてオレは立ち上がる、
 オレは横でゾンビの様な顔をしながら自分の答案を眺めている卓を横に教卓に向かった。そして答案用紙を受け取ると息を飲んで点数を確認した。
「あっ……」
 オレはテストの点数に開いた口が塞がらなかった。
 休み時間に香奈に頼み込んで来栖さんを呼んでもらうとオレは帰ってきたテストを見せた。
「英語69点、数学76点、語学78点、物理80点、美術72点」
 正直信じられなかった。
 オレがこんな高得点を取れるなんて思わなかった。今でも夢じゃないのかと思ってる、
「何よ、アタシ全部90点行ったわよ、ホラ」
 香奈がテストを見せると全てが90点以上、数学だけは100点だった。
「ちょ、ちょっと香奈ちゃん!」
「はぁ? 聖子なんて全教科100点満点じゃない」
「香奈ちゃんっ!」
 そりゃ叶わない事は分かってたけど現実を見せられ力が抜けた。オレの手からテスト用紙が滑り落ちた。
「ちょ、ちょっと吉崎君! テストテスト!」
 来栖さんは慌ててオレのテスト用紙を拾ってくれた。
「オ、オレ…… 始めてこんな点数取ったんだ」
 すると香奈は目を反らして口を尖らせる、
「……まぁ、アンタにしちゃ頑張ったんじゃない? よくやったわよ」
「えっ、お前……」
「な、何でもないわよ!  余計な事考えんじゃないわよ、バカのクセに……」
「クスッ、香奈ちゃんったら……」
 来栖さんは微笑する、すると今度はオレを見て拾ったテスト用紙を渡してくれた。
「頑張ったんだよね、やればできるじゃない」
「ああ、ゲームの方も頑張るよ」
「うん」
 来栖さんは頷いてくれた。
「あ、いけない! そう言えば私先生に用事頼まれてるんだった。先に教室に戻ってて」
「行ってらっしゃい」
「……もう休み時間も終わりね、仕方ないから放課後で良いか」
「何が?」
 オレが尋ねると香奈はオレの胸倉をつかみながら言って来た。
「決まってんでしょう、一緒にゲーム作ってるって言う下級生に会いに行くのよ! 良いわね?」
「は、はい……」
 オレは放課後、つかさちゃんを香奈に会わせなければならなくなった。
 それはまるで飢えたティラノサウルスの前にハムスターを差し出すような心境だった。