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ステージ2,ゲームと勉強

 
 ゴールデンウィークが明けてから一週間後には中間テストがある、
 前にも言ったがオレは赤点じゃ無ければどうでも良かった。今だってそう思っている、だがオレ達の学校は結構厳しく、赤点を1つでも取ると合格点を取るまでずっと追試、期末テストは長期休みが殆どないと言う悲惨な結末が待っているのだった。
 幸いまだ追試を受けた事は無いが殆ど綱渡りの状態だった。テスト期間中全ての教師の顔が悪魔に見える、
 きっと今ごろ職員室ではどれだけ生徒達を補習地獄に落としてやろうかと考えているに違いない、攻撃する側と守る側では一番楽しいのは攻める側だからな、
 ちなみにつかさちゃんは実は普段から勉強している上に中間テストの対策は出来ていると言う、ぬかりのない子だ。
 だがオレは何の対策もしていない、このまま行けば確実に赤点を取り、追試王国の住人になってしまうのは確実だった。
「はぁ……」
 オレは学校の机の上に広げている生まれたてのアザラシの体毛のように真っ白で、何も書かれていない全教科のノートを見ながらため息を零した。
 授業中でもゲーム作りに没頭してロクにノートを取っておらず、元々聞いてなかった教師の話も全く耳に入ってなかった。よく見つからなかったと自分でも感心する。
「何よ、タコがふてくされたみたいな顔して?」
 そこへ口うるさい奴がやって来た。
 人が悩んでるってのにキツイ事を言ってくる、少しはつかさちゃんや来栖さんを見習いやがってんだ。
「ん?」
 すると香奈は俺のノートを覗き込んだ。
「何よアンタ、全然書いてないじゃない、授業中何やってたのよ?」
 何をやってようと関係ない、
 それにこいつは一々声が大きすぎる。クラス中何事かとこっちを見ている、
「どうでもいいだろ、ほおって置けよ」
「そうも行かないわよ!」
 オレが口を尖らせると香奈は目を吊り上げて机を叩いた。
 その反動で置いてあったノートや筆記用具がほんの僅かだが宙に浮かんだ。
「アンタの成績下がるのは勝手だけどアタシのバイト代まで下がったらどうしてくれんのよっ?」
 そんな事は関係ない、
 こいつはオレの面倒を見るように親に言われているが家庭教師の真似事をしろとは一言も言われていない、
 それを言うと香奈は両手を腰に組んでズイッと顔を近づけてきた。
「可能性が1パーセントでもあれば潰すわよ」
「どこの悪役だよ、お前は?」
「全く、頭が痛いわ」
 頭痛薬でも飲んで寝てればいいと言ってやりたいが必ず何かしらの返答が帰ってくる。
 こいつとの言葉のキャッチボールは無限回廊のようにエンドレスに続くので大抵オレが折れてやる事になっている。たまにはギャフンと言ってやりたいもんだ。

 その放課後、さすがにテスト期間中はグラウンドで部活をしている連中は居なかった。
 しかしオレの問題は解決してない、殆ど白紙のノートでどう勉強すりゃいい? 誰かにノート借りようかと考えたが誰に借りればいい?
 卓だって勉強しているので貸してくれる訳が無い、100歩譲って見せてくれたとしても『その代わりにW・О・Cに入れ』と言うに決まっている、
 まして学年内で下から数えた方が早い奴のノートを見たって参考になるとは思えなかった。
「本当に何やってたのよ? 珍しく勉強してると思ったのに」
 香奈はオレがゲームを作ってる事を知らない、
 別に隠してるつもりは無いがこいつはやたら突っかかってくる上に口うるさい、つかさちゃんにも迷惑が掛かもしれないと思ったからだ。
「別に……」
 俺がソッポ向くと香奈は深くため息を零した。
「……仕方ないわね、コピー写る?」
「え、良いのか?」
 お前にも優しさってモンがあったんだな、オレは嬉しいぞ!
「1ページ30円でいいわよ」
 前言撤回、やっぱりこいつただ守銭奴だ。しかも楽しそうに言いやがって……

 オレは香奈がバイトしているコンビニにやって来た。
 城彩高校は基本的にバイト禁止だが香奈は学校からバイトを許可してもらっている。こいつは昔から頭が良いから学業を疎かにしてなければ文句は言われないだろう、
「ったく、面倒くせぇ!」
 香奈に払う分とは別にコピー代もオレの自腹で払ってる、原因はオレにあるとは言え納得できない、
 その香奈は表で電話していてオレがテスト範囲全てを写し終えると表に出た。
 オレに気付いた香奈が電話を中断してオレに尋ねてきた。
「明日アタシの家で勉強しない? 相席になるけど……」
「相席って?」
「友達1人と勉強する約束してたのよ、ウチのクラスだからアンタも知ってると思うけど……」
「ふ〜ん、誰だ?」
「聖子」
「え?」
 オレは耳を疑った。ウチのクラスで聖子と言えば1人しかいない、
「まさか、委員長?」
「他に誰がいんのよ?」
 つまり何か? 来栖さんと一緒(香奈もいるが)に勉強するのか?
「何? 都合悪いの?」
「いや、そんな事は無い」
 こう言うのを身に余る光栄と言う、
 まるで平民がお姫様とダンスを踊るような気分だ。休日でも来栖さんに会えるなんて嬉しい以外のどんな言葉で表せばいいんだろう?
「言っとくけど勉強すんだからね! ゲームの話なんかすんじゃないわよ! あの子もゲーム好きなんだから!」
「わ、わーってるよ」
 そりゃオレだって今回だけは絶対に赤点を取る訳には行かないからな、真面目にやるつもりだ。