ACT ARME1
「なんだ。結局ただのわがままガキ大将じゃん。お前ん家に俺の欲しいもんあるからそこをどけつってんでしょ?で言うこと聞かなかったら武力行使でどかすとか。
まさしく精神がお子ちゃまのままなキチガイってやつだよね。『体は大人、頭脳も大人、でも精神はガキンチョ』みたいな。
さらに付け加えるにそう言う奴は自覚なしで自分のやっていることが絶対に正しく正義だなんて思い込んでるから始末に負えない。」
「さらにさらに付け加えさせていただくと、イーセントリニウムは先ほど述べたように非常に希少価値が高いので、発見・発掘した際はその町の自治会に報告しなければならない義務が存在します。
ですが最近イーセントリニウムが発見・発掘されたという情報は入ってきていませんから、その事実は隠蔽してあるみたいですね。ですから盗賊という呼び名もふさわしいと思いますよ。」
「なんにせよクズってことだろ?どーでもいいじゃねえか。こいつらをいちいち評価する価値なんざねえだろ?」
「同感だね。とっとと終わらせようか。」
ついにはルインだけでなく、ツェリライとグロウまで加担して一斉口撃を仕掛け始める。
ゴーダツはその口撃を受け、限界寸前まで怒りが溜まっているようだ。声を震わせながら脅す。
「貴様達、今の状況がわかっているのか・・・?」
ルインはまるで脅されていると気づいていないかのようにケロッと話す。
「へ?何が?あ、そうだ。一番聞いとかないといけないことがあったんだった。あのさあ、今までの話って地上にいる一般ピープルな社員さんたちは知ってんの?」
「ふん。規定と常識にとらわれた愚かな社員に、この重要な情報を伝えるわけはないだろうが。」
「あっそう。じゃあ地下だけを潰せばいいね。」
「大した自信だな。その虚勢が崩れ去るのが楽しみだ。」
そう言い放ち、ゴーダツが指を鳴らすと、照明が消え視界が効かなくなる。再び明かりがつき、眩しさに目が慣れた時にはすでに周りはメカや兵士に囲まれていた。
「ここを嗅ぎつけたのが運の尽き。自らを恨んで死んでいくのだな!」
「うわーお。極上の負けフラグもらっちゃったよ。」
「かかれ!」
もうゴーダツの耳にはルインの声は聞こえていない。と言うより、聞けば聞くほど腹が立つので聞かなかったというべきか。とにかく、ゴーダツの一声で敵が一斉に襲いかかってきた。
「ではあとはお二人に任せます。」
「了解。でも自分の身は自分で守ってね。」
「言われるまでもありませんよ。」
その言葉を聞いたルインは刀を抜き、瞬足というにふさわしいスピードで敵陣に突撃していく。因みにグロウはゴーダツがかかれ!と叫んだ段階で敵に突っ込んでいっている。
三対多数、いや実質二対多数というありえないハンディマッチ。戦局は当然、ルインたちが圧倒していた。いやもうはっきり言ってお約束だよね。こういう展開は。
ルインは敵が攻撃を仕掛ける前に倒してしまっているし、グロウは寄ってたかってくる敵を片っ端からハンマーで殴り飛ばす。しかもひと振りで7〜8人をいっぺんに吹き飛ばすのである。
戦闘が始まったとたん劣勢に陥った戦局を見たゴーダツは、既に真っ青に青ざめていた。
「これは、私の目がおかしくなってしまったのか?」
「い、いえ。私の目にも同じ光景が広がっています。・・・どうしましょう。」
そう言われ、しばらく黙りこくるゴーダツだったが、やがてスナッチに指示を出す。
「急いで『あれ』を用意しろ。」
「あれですか!しかしあれはまだ試作段階で・・・」
「構わん!あの男どもを倒すためだ!背に腹は変えられんだろう!急げ!!」
「は はい!了解しました!」
そして後ろに姿を消すスナッチ。ゴーダツはそれを見送り、そして忌々しそうに暴れている二人を見下ろす。
「己、ゴミ虫ども。目にものを見せてくれる・・・!」
さり際にしっかりと負けフラグを立てるのは忘れなかったようだ。
「うおーーーーー!」
「うわーーーーーー!」
「ぎゃーーーーーーー!」
その様子を端に避難して見物していたツェリライは素直な感想を漏らす。
「果たして敵は気合の声を上げているのか、悲鳴を上げているのかわからないですね・・・・。」
「うわああぁぁああぁぁあ!?」
「お、お助・・・ぎゃーああす!?」
「あべしっ!!」
「ひでぶっ!!」
「・・・・訂正。敵は明らかに悲鳴を上げていますね。まあ、当然でしょうね。あの二人が相手では。」
その二人は、素晴らしいまでの無双を繰り広げている。様子を見るに、ルインはスピードテクニカルタイプで、グロウはパワー馬鹿タイプだ。二人がゲームキャラならどちらを使うか迷うところである。
と、ルインの後ろからメカが攻撃してきた。が、難なく回避し、腕を切り落としたあと忽然と姿を消した。
辺りを探そうとする操縦者。だが当然もう遅い。
「上だよ上。」
そう上から声が聞こえ、声のする方を見上げると、ルインが真っ逆さまに落下してくるのが見えた。そして
「琥獅刺し(くしざし)!!!」
背中についているエネルギーポッドに刀を突き立てる。動力を失ったメカはそのまま動かなくなった。
「ォラォラオラア!!」
グロウが吠えるごとに累々たる犠牲者の山が連なる。
「うぉりゃあああああああああああああ!」
▽とそこに雑魚兵Aが現れた!
▽雑魚兵Aのこうげき!
「喰らえ!!」
▽雑魚兵Aは剣を突き出してきた!
「オラア!!」
▽グロウははんげきをした!しかし雑魚兵Aにかわされた!
「動きが遅い。隙だらけなんだよ!!」
▽再び雑魚兵Aのこうげき!グロウの肩に剣が突き刺さった!
「へん。そんなノロい攻撃に誰が当たるんだよ!」
▽雑魚兵Aは勝ち誇った!
「ああ?」
▽しかしグロウは雑魚兵Aを睨みつけた!どうやらグロウは全くダメージを受けていないようだ。
「え?な、ちょ、おま、ま・・・」
▽グロウのはんげき!
「オラア!!」
ドン!
「グエべふ!!?」
▽痛恨のいちげき!雑魚兵Aは途方もないダメージを受けた!雑魚兵Aは立ち上がる力を失った。
▽グロウは雑魚兵Aに勝利した!!267の経験値を獲得した!
「・・・・オイコラ。メガネ。てめーさっきから何字幕で遊んでんだよ?」
「え?いやまあ暇でしたから。細かいことは気にせずやっちゃってください。」
「・・・そんなふざけたことを言っている間に。」
とツェリライの体が突然影に覆われる。
「後ろから来てんぞ。」
そしてツェリライに剣が振り下ろされる。が、剣はツェリライに命中することなく、兵士とともにあっさりと崩れ落ちた。
「Noproblem(問題ない)ですよ。」
「流暢な英語自慢してんじゃねえよ。ったく。」
「そういえばルインさんどこに行ったんですか?」
「ああ?あいつが何処行ったかなんざ知らねーが・・・」
<わーーー!ぎゃーーーー!
<待て、来るなあああ!ぐはゥ!
<メディック!メディーーーック!!
「・・・・あっちじゃねーのか?」
「そうですね。間違いないでしょう。ではここ辺り一帯もグロウさんが戦闘不能にさせましたし、僕たちも向かいましょうか。」
そしてグロウとツェリライは、先程から悲鳴と絶叫が上がり続けている方へと向かっていった。
「くそ、一斉射撃用意!」
「だから無駄だって。」