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ACT ARME1

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「そんなことないよ。だって『任せてよ』の前に、『僕に』って言ってないもん。つまり、僕がだれに頼ろうと、それは自由だということさ。そんなことより、何?このハマチテラニクスって。」
「ハマテチラニックスです。最近開発された超合金ですよ。摂氏二千度で熱すれば容易に変形し、加工がしやすいという半面、反対に冷やせばレニウム並みの高度を誇るとされています。近年、この超合金を使った新しい軍用兵器も開発されるんだとか。」
「れにうむ?」
「自分で調べてくださいね。説明はしませんよ。」
「ケチ。」
「まあとにかく、今科学においてこの超合金は注目の的です。その会社も、何としても研究に着手したいんでしょうね。」
「ふ〜ん。それで?どうすればいいわけ?」
「別にどうする必要もないですよ。ただ普通に断ればそれで終わりです。ただ、悪質な業者は嫌がらせをして、半ば強制的に立ち退かせることもありますけどね。そちらのほうは心配する必要はありませんよね。」
「もち。そんなことしたら地獄で後悔させてあげるだけだからね。わかった、じゃあ今のところは特に何もする必要がないってことだね。じゃあ、また何かあったら連絡するよ。」
「また?」
「うーん、なんとなく『また』があるような気がするんだよね。」
「根拠は?」
「無い。でもなんとなくやな予感がするってだけ。」
「はあ・・・まあとにかく、一旦はそれで落ち着くと思いますので、心配する必要はないと思いますよ。それじゃ。」
「さんきゅー、感謝します。今度お礼するから。」
「この間、二千セラ(この世界の通貨のことね)を貸した時にもそんなこと言いましたよね。でも、お礼された記憶は全くありません。さらに付け加えるとまだ返してもらってないはずですが?」
ブツッ。
「・・・・・・・・・・・。」
ルインは今の話を大家さんに聞かせ、一旦は事の終息を見た。
ただ、悪い予感は当たるというもの。当然、これで終わりになるわけがない。
その翌々翌々日の朝、つまり四日後の朝。
ルインはいつものように目を覚まし、自分の部屋がある二階から一階の大家さんの部屋に行く。そこでいつもコーヒーをねだるのが習性なのだ。
だが、そこに毎朝いるはずの大家さんの姿がない。いないだけならまだしも、開け放たれ、中身が散らばった戸棚。机の上の食器類も割れている。
これは、明らかに部屋が荒らされたあとだった。
ルインはしばらくその光景を眺めていた。そしてキッチンに向かいいつもは大家さんが淹れてくれるコーヒーを自分で淹れる。自分で淹れたコーヒーはいつもより味が薄い。
「やっぱ大家さんが淹れてくれたコーヒーじゃないと飲みごたえがないな。」
そう独りごちる。
しっかりと飲み干してからキチンとシンクの中にカップを入れる。ここあたりは大家さんの躾が行き届いている証拠である。
そしてルインは自分の部屋に飛び戻り、即刻ツェリライに電話する。
「ツェル、大変だ。大家さんが攫われた。」
「え?なんですって?大家さんが攫われた?」
「さっき大家さんの部屋に行ったら部屋が荒らされてて、いつも必ずいるはずの大家さんの姿がない。」
「なるほど、下手人はタイミングから考えて例の件で立ち退きの要求をしてきた会社なんでしょうね。」
「まず間違いないと思うな。やれやれ、よりによって僕の前でそんな愚行を犯すとはね。」
「その前にまず一番近くにいたルインさんがまっさきに気づくべきだったと思うんですけど。」
「寝てたんだからしょうがない。」
「・・・・・。それにしても、その会社は研究開発社の風上にもおけない低俗企業ですね。同じ立場に立つものとして腹立たしいものがあります。」
そういやここまで書き忘れていたが、ツェリライは齢17ながら研究者である。ルインとは違い、ネットワーク上で何か色々と仕事をしているらしい。
さらにお手製のメカを作り上げ、それをネットで販売することもしている。つまりルインよりはるかに立派に自立生活を送っているのである。
ただ・・・
「そもそも、自分たちの研究のために無関係の人間を巻き込もうとしているところでまずアウトですよね。ハマテチラニックスは人工の超合金なんですから場所はどうとでもなるはず。それをやりやすい場所があるからそこに住民がいてもお構いなしというその精神は恥ずべきもの。研究とは開発とは常に人のためにあるものですから、開発のためというふざけた大義名分を振りかざしてなんでも手に入れようというジャイアニズム精神を持ったキチガイは早々に消え失せて欲しいものです。開発を商売としか見れない人間は哀れでしょうがありません。もっと視野を広げればそこには無限大の可能性が広がっているというのに、それなのにああいう組織はすぐ目の前にある金と利益のことし――――――――










                                     でしょう。そう思いませんか?」
そう、彼は研究開発というものに、そして知識を持っている自分に大きな誇りを持っている。
回りくどく着飾った書き方をしないで簡単に書くと、ツェリライはタカビーなナルなのである。
ツェリライが演説を繰り広げている最中、ずっと受話器を放り出していたルインは、ツェリライの話が終わったことを直感で感じ取り(ルインは直感が鋭いのだ。なぜか)、適当な相槌を打つ。
「あーうんうん、そうだね、その通りだと思うよ。」
「・・・やはり聞いていなかったようですね。」
「イヤイヤソンナコトナイッテ。チャントキイテタヨ―。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「いやごめんって。僕は難しい話わかんないから。そんなすねないでさ。ねっ?」
「別に拗ねてはいませんが。それで、どうするつもりなんですか?」
「それは聞くまでもないことでしょう。僕から朝の有意義なコーヒータイムを奪ってくれた悪の秘密結社にお礼してあげるだけだよ。」
「当然そうなりますよね。でも勘弁してくださいよ。この前のような事態引き起こしたら、今度こそ禁固刑を喰らうことになりますよ。」
ルインは以前コンビニを占拠したヤンキーグループを崩壊させたことがあるのだ。
相手は孔が扱えてその上武器持ちだったのだが、グロウと二人で正面突破を敢行し、誰ひとりとして死人を出すことなく事を終えた。
まあ最もそのヤンキーグループは一番軽いやつで全治三ヶ月だったらしいが。
おまけに店内もかなり凄惨な風景に変わっていたため、警察にかなりこってりと絞られることとなった。
「大丈夫だって。今度は手加減するよ。おとなしく殲滅されてくれればね。」
「大丈夫と言っておきながら早々に暴走フラグを立てるのはやめてください。穏便に頼みますよ本当に。」
「了解!!」
「大丈夫なんですかね・・・。」
この一連のニュースに不安は多々つのれど、こうしてルイン、ツェリライ、グロウ(アコは話を聞いてすぐ撤退した)のお三方は、大家さんを攫っていったと思われるエレクトンゴーダツカンパニーへと向かっていった。
「しかしあれだね。」
敵陣、じゃなくて本社へと向かう道中、ルインが切り出す。
「なんでまたわざわざ誘拐なんてヘンテコな真似したんだろうね?」
作品名:ACT ARME1 作家名:平内 丈