ACT ARME1
「まあそれも一理ある。ここに並んでいる豪勢な料理が、僕が拘置所行っているあいだに勝手に使われた僕のお金で作られたものじゃなきゃね!」
ドン!と派手にターブルを叩く音が響く。
「他人のお金使うとか絶対泥棒だよね?犯罪だよね!?」
「いやだってあったから。」
「あったから?あったから何!?今すぐ治安部隊呼んで逮捕してもらってやる!」
と、怒りまくっているルインに対し、ツェリライが冷静に反撃。
「まず前提として、このお金はルインさんのものではありません。大家さんのものです。そしてその大家さんからしっかりと承諾を戴いていますので、何一つ問題はない。No problemです。」
「ぐぅ。」
ルインの怒りは、ツェリライの迫撃砲の一撃により、あっけなく沈没した。
「まあいいじゃん。結局このアパートは無事自治会に売られて、大家さんとルインはそれぞれ家賃タダの家をもらえたんでしょ?」
そうなのである。その後自治会の調査隊の調査により、ルインの住むアパートの近くの地下に大量のイーセントリニウムが発見され、自治会から正式にアパート買取の話を持ちかけられた。
その話に大家さんは渋るかと思えば、それはもうびっくりするほどあっさりと快諾した。
その反応にものすごく引っかかったルインは大家さんに質問。
「あ、あれ?大家さん?たしか、この会社から立ち退きの話が来た時は、嫌がってましたよね?だから僕が無視すればいいというツェルのアドバイスを大家さんに伝えて、それでこんな騒ぎになったわけなんだよね?」
そう問いかけるルインに対して、大家さんはすっぱりと言ってのける。
「いやね、あんた。こんなにいい条件であのアパートを売ってくれって言われて断る理由なんてないわよ。」
「あの時確か大家さん、『このアパートに住んで長いから思い入れあるわー』みたいなこと言ってませんでしたっけ?」
「老い先短いなら、あとはどれだけ余生を楽しく楽に生きれるのかが勝負なのよ。」
そうはっきりと、そしてしゃあしゃあと言ってのける大家さんに、ルインはもう何も言えなかった。
「まあそれは良かったんだけどね。でも、あんなでかい家貰ったところで持て余すだけなんだけどなあ。」
「他人から物貰っといてグダグダいってんじゃねーよ。」
「どのくらい大きいの?」
「ん?8LDK。」
「・・・・・・・・・・・はぁぁ!!?」
一同絶句。
「ね?でかすぎるでしょ?」
「ま、まあイーセントリニウムはそれだけの価値はありますが、それにしても8LDKとは。謝礼としては大きすぎますね、確かに。」
「でしょ?大家さんは大家さんで別に家貰ってるから、もうコーヒーも自分で入れないといけないし、水道光熱費はタダじゃないし、なにより掃除をどうすればいいかわかんないし。」
「・・・・うん。確かになんか羨ましがっていいのかどうか悩むところね・・・。」
「アコちゃんも住む?ちょっとしたアパート状態になっているから、住むことはできるよ。本当のアパートじゃないから、めんどくさい手続きもいらないし。」
「いや、いいわ。」
「ツェルは?」
「僕も遠慮しておきます。」
「グロウ・・・」
「聞くまでもねえだろ。」
「ですよねー。あーあ、全く。どうしようかねえ。」
「売っちゃえば?」
「住む家がなくなる。それに、僕はもらったものを売りさばくような非人道的なことしないよ。」
そしてしばらく考えたのち、ルインは結論を出した。
「うん、いいや。あの家の2,3部屋だけ使おうっと。」
「うわ、もったいな。」
「しょうがないじゃん。ぼくひとりじゃ手に余るんだから。」
ピンポーン(呼び鈴)
「お?誰だ?」
と、ルインがドアを開ける。すると、見慣れぬスーツ姿の男たちが。
「何の用ですか?」
若干警戒しながら質問する。その様子に、相手は困惑しながら答えた。
「いえ、そろそろお時間ですので参ったんですが・・・。」
「え? あ。えっと、ちょっと待っててください。」
そう言い残し、ルインはテーブルで食べている三人に告げる。
「ごめん、みんな。あと5分ぐらいでそれ全部食べちゃって。」
「え?なんで?」
「引っ越し業者が来ちゃった。」
見るとスーツの後ろに、明らかに引っ越し業者の姿が。それを見たアコはあわてて抗議する。
「は!?なんでもう呼んじゃってるのよ!」
その抗議をあっさりと片付けるルイン。
「いやだって、家に戻ったらこんなことになってるなんて想像してなかったもん。ほらほら、いろいろ言ってないでとっとと食べて。僕は自分の荷物をまとめてくるから。」
そう言い残し、上へと上がっていったルイン。
その後、なんとか5分ですべてたいらげ、うっとこせ感とげんなり感が漂う三人とルインは、引っ越し先へと向かっていったのだった。