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ACT ARME1

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「ありがとうねぇ。ルインちゃん。」
「何を水臭いこと言ってるんだか。初めに言ったでしょ。このことは任せてって。って、だからそのチャンづけはやめてってば。二人に聞かれたら―――――」
「時すでに遅しですよ。ルインちゃん。」
「!!!!??」
弾かれたぜんまい仕掛けの人形のような素早さで振り返ると、福笑いで派手に失敗した時のようなにやにや笑いを浮かべたツェリライとグロウの姿が。
「おら、やるこたぁやったんだからとっとと帰るぞ。ルインちゃん。」
「そうですよ、ルインちゃん。」
「二人ともォ・・・」
いつになく羞恥の渦に引き込まれていくルインを見て面白がる二人はヒートアップ。
「せっかくだからこの場にいないアコさんにも教えてあげましょうか。」
「いや、それよか効率がいい方法があるだろ。てめーならできるんだろ?町内の放送ジャックして自分の声流すことぐれぇよ。」
「ああなるほど。町内の皆さんにも伝えるわけですね。名案です。これは僕が一本取られましたね。」
「『今日からみんなで』」
「ルインちゃん(笑)。」
チャキッ!!(鍔鳴りの音)
「へぇ・・・二人ともそんなに若い命を散らしたい自殺志願者だったとはねえ・・・。
これは知らなかった。」
まさしく『ゴゴゴゴゴゴゴ・・・』という擬音がぴったりな状況。もしかしなくてもさっきゴーダツにヤキ入れていた時よりも殺気がこもっている。
「ちょうど良かった。僕でよければ手伝ってあげるよ。」
「あ・・・・・・・」
「お゛・・・・・」
「GO TO HELL!!!(地獄に堕ちろ!!!)」
情け容赦なしのルインの攻撃。こうなったら逃げるのが最良策である。
「ぬおわっ!危っぅ!!」
「ちょ・・・何をトチくるってるんですかルインさん!お、落ち着いてください!」
「ヒャーヒャヒャ!!!まずはその減らず口をたたく舌をさばいた後にそんなくだらないことを考える脳味噌えぐりだしてくれるわぁああ!!!」
「笑えねえぐらい怖いことぬかしてんじゃねええぇぇ!!」
この地獄絵図を、作り上げた元凶である大家さんは、いまにも縁側でお茶と団子をいただきそうなほどほのぼのとした雰囲気で眺めていた。
「若いっていいわねぇ。」
そして18分と23.7秒ぐらいたった後、体力切れを起こした三人は治安部隊に呼び出される。
「またお前たちか。」
「開口一番それですか。係長さん。」
「あたりまえだ。月一のペースでこんなことされたんじゃ、こっちもたまらんだろ。」
「でもいいじゃん。無駄に暴れてるんじゃなくてちゃんと悪人退治してんだからさ。」
あっけらかんと言い放つルインを無視して、係長は話を続ける。
「まず第一に、強いといえども一般人がこんなヤマにほいほい首突っ込むという段階でアウトだ。」
「そこはほら、みなさん治安部隊のお手伝いボランティアってことで。」
お茶らけながら返すルインを完全無視し、続ける。
「第二に、お前らは毎回やりすぎだ。今回もなんだ?最近行方不明者が相次いで起きていて、その身辺を洗っていたら出てきたこの企業に押し入ろうとしたらすでに終わっていて、そこの組合人は全員フルぼっこ。挙句の果てに黒幕は全治一年の重症だ?
お前らは加減というものを知らないのか?」
「いやぁ、一応は加減してんだけどね・・・。全治一年とは・・・そんなに重かった?」
その質問には答えず、係長は眉間を抑える。
「全く。前のコンビニジャック事件じゃ、治安病院が野戦病院に早変わりだ。『ここは加害者なのか被害者なのかわからない人物を治療する場所ではありません。任務において負傷した治安部隊員を一分一秒でも早く治癒させ、任務に復帰させる施設なんです。』って、散々クレーム飛ばされたんだぞ。少しは労わってくれ。」
「あれぇ?その発言は人を治療する病院としてはずいぶんと間違ったこと言ってない?」
「言ってない。治安病院を普通の一般病院と一緒にするな。クレームは至極正当だ。」
「あらー。係長さんも苦労症だねぇ。禿げないように気をつけてね。」
珍しく殊勝に他人を気遣うルインに対し、一切礼をいうことなく返す係長。
「もしそうなったら傷害罪でお前を訴えるから安心しろ。」
「えっ!?ひど!たかが髪の毛で!?」
「当たり前だ!ガキのお前らにとってはたかがでもな、俺にとっては切実なんだよ!・・・やめい!そんな哀愁の眼差しで俺を見るな!」
「あ、あの〜。ヒネギム係長?よろしいでしょうか?」
と、実はルインとかけあいを始める前から待っていた部下が、ルインと同じような眼差しでおずおずと割り込んでくる。係長はその頭に鉄槌を落とした後、話を聞く。
「お前までそんな目で見るな。それで?どうした?」
頭をさすりながら係長に耳打ちする部下。
「・・・・うんそうか、分かった。ご苦労だ。」
そしてつかつかとルイン歩み寄り、有無を言わさずその手に手錠を下す。
「あ、あれぇ〜〜〜〜係長さん?これは一体何ですかな?」
「手錠だ。見てわからんか。」
「いや、典型的なボケかましてないで説明ぷりーづ!!」
必死で無罪を訴える容疑者と、完全に容疑者がクロである証拠をつかんで冷ややかに見降ろしている係長の図。
「お前、自分の罪を認識していないようだな。」
「いやいや、これは確かにやりすぎた感はあってもこれ嵌められるまではないでしょ!誰一人殺してないし!それにそんなこと言うんだったらあの二人も同罪でしょ!」
「違う。それじゃない。そのことはそこの二人を含め、後で絞らせてもらうがな。」
その言葉に同情を装いつつも内心笑っていた二人の顔が引きつる。
「じゃあなぜに僕だけ!?」
その質問に、係長は高らかにルインの罪状を告げた。
「十八時四十七分。ルイン容疑者を不法入居罪で逮捕する。」
「・・・え?」
「お前の『大家さん』から話は聞いている。お前、正式な入居手続きもせずにあのアパートに住んでいるそうだな。挙句家賃も払ってないとか。」
「・・・あ。」
「というわけだ。こいつを署まで連行しろ。」
「はっ!」
そのまま引っ立てられていくルインに、ツェリライとグロウの二人はハンカチを振り振り見送った。
「戻ったらムショの飯の感想教えてくれや。」
「御達者で〜〜〜。」
「いやちょっと二人とも!少しは引き留め・・・いやまっ、あーーーーれぇ〜〜〜〜〜.....。」
そのまま護送車にて引っ張られていった。
「他人事みたいにふるまっているが、お前らも後で連れて行くからな?」
しっかりと残りの二人に釘を刺すところは、流石キブ治安部隊実働係を一手に引き受けるヒネギム係長である。

そして5日後、四人はルインのアパートに集まっていた。
「それでは、ルインの出所を祝って、かんぱーい!」
アコの号令に従って、杯が三つ掲げられた。
「ちょっと、主役が乾杯しないでどうすんのよ?」
不満そうな声に仏頂面な回答が返ってくる。
「あのさ、出所祝いしてくれるのはありがたいんだけど、なぜに一切関わらなかったアコちゃんがここにいるのかな?」
「え?別にいいじゃないそんな細かいことは気にしなくても。お祝いは大勢の方が楽しいでしょ?」
アコが明るく返す一方で、ますます仏頂面になるルイン。
作品名:ACT ARME1 作家名:平内 丈