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サイコ・PASS 火星開拓

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キミドリ・金原症候群


 

 2112年、東京都の西部、八王子市にあるドローン(ロボット)を製造する工場では、外部とは一切遮断される。陸の孤島、行政も入り込めない。当然、人権団体などが、最も弱い従業員をいじめる事は外部に知られなかった。そして、何者かによってロボット3原則を無視するプログラムを組み込まされ、事故に見せかけた殺人事件が、3件起きた。当然、公安は黙認できない。


 なぜロボットで殺人をさせない安全装置が外せたのか、謎である。外部とは一切連絡できない。

 ドローンを製造するのは産業用ロボットで完全自動である。品質管理は人間の手で、毎月、1000対も送り出さないとならない。限られた従業員だけで仕事するから、工場に閉じ込められる。24時間体制で長時間働かされる。

 労働基準法違反であり、ある意味では監禁行為である。

 国民背番号制度が実施され、個人個人にIPアドレスが振り分けられている。IPv6の場合、340澗、すなわち340兆の1兆倍の1兆倍のIPアドレスが振り分けられているので、今後、数百年間は枯渇しない。さらにNATで振り分ければ、ほぼ無限の番号が与えられる。

 住所でいえば、○○市○○町1-1-1 ○○団地10号棟『105号室』という具合で、同じ住所でも、部屋の番号が違えば、他人の部屋である。部屋番号にあたるのがNAT、そして住所に当たるのが、IPアドレスである。それが、無数にある。ほぼ無限である。

 量子コンピューターが主流になった22世紀では、ひじょうに複雑な暗号を生成し、ランダムなノイズによって防御しないとハッキングされる。

 当然、閉鎖空間に入れられる人たちに事前に、殺人プログラムが秘密裏に埋め込まされる。たとえばポルノ画像を集めると、何枚かの画像ファイルに埋め込まされたプログラムが連結して、2ちゃんねらーの自分のパソコンがいつのまにか中継機にさせられる。自分が知らずに悪質な脅迫状を送りつけることにされる。メールや掲示板に犯罪を予告する書き込がさせられる。十数年間、殺人ウイルスプログラムを少しずつ送られるうちに、殺人プログラムが完成される。そしてローカルエリアネットワークを通じて、ドローンに殺人行為をさせないプログラムを解除させられる。当然、小学生の時から、いじめられっ子に対して、殺人プログラムを少しずつ挿入される。

 そして、就職して陸の孤島で働かされると、蓄積したプログラムが意志を持っているかのように、個人を割り出すIPアドレス、個人を特定する体内IDチップの中で、殺人プログラムが完成される。外部と通信ができなくなると自動的に作られるプログラムだから、誰が作ったウイルスなのか特定できない。

 小学生高学年から就職時まで、殺人プログラムを当たり障りがないフィルから送りつけられる。ウイルススキャンソフトでも認識できない。そして、閉鎖された環境と高いストレスで、殺人プログラムが完成する。その結果、ロボットを使った殺人事件が行える。殺人をした本人は気がつかないうちに、殺人事件が行える。

 22世紀、科学技術が爆発的に進歩したが、人間の心は退化している。

 当然、殺人事件が多発する。国家の威信の上で、犯罪事件は公表されない。