作品集Ⅱ
好く有る噺/寂しがり屋の噺
久々に夢を見ました。小さい頃の記憶を辿るだけの、冷たい夢でした。其れ以外は、覚えて居ません。
蒲団から這い出ると、辺りは未だ薄暗くて不気味でした。段々朝が近付き、動悸も始まり、其の場に崩れ折れて、泣き乍再び眠りに就きました。
目が覚めた時、横には男が居ました。良く見つめると、お付き合いしている人であります。何時の間にかきちんと床へ就いて居り、隣からは安らかな呼吸が聞こえます。どうやら、この男性が整えて呉れた様です。其の寝顔を見た途端、堪えていた涙が次から次へと溢れ出て、仕様も無くなりました。
嗚呼、人の温もりが在っても、寂しくて涙が出る。