小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

セクエストゥラータ

INDEX|49ページ/60ページ|

次のページ前のページ
 

 W杯グループステージ開始前から、日本チームはほぼ確実に一位通過すると見られていた。それは、過去の対戦成績や、チーム戦術の相性、主力選手の調子、怪我などの状況を考慮した上ではじき出された予測だ。
 どのスポーツにも言えることだが、試合の勝敗に絶対はなく、予測は予測でしかない。
 それでも、日本と同じD組のチームは、組み合わせ抽選が終わったその瞬間から、二位通過を狙わざるを得なかった。
 今回の日本代表チームは、それほどまでに強かったということだ。
 代表監督としては、誇らしくもありプレッシャーでもあったが、チームの仕上がりには自信があった。

 俺は、脅迫を受けた。
 その内容は言わずもがな、負けろ、というものだ。
 別段珍しい出来事ではない。通常は本人の目に入ることなく処分されるし、本人が目にしたとしても、相手にせず破り捨てる。そんな下らないものに気を取られているようでは、代表監督など務まりはしない。
『お前の娘を誘拐する』
 幸か不幸か、一通の脅迫状が俺の目に入った。
 同封されていた一枚の写真には、隠し撮りされた河合奈津美が写っていた。

 二十三年前を思い出す。
 届けられた脅迫状。
 一枚の写真。
 そこに写ったテオドラの姿。
 笑い飛ばして試合に出場したあの夜。

 何の確証もないが、同じヤツの仕業だと思った。


作品名:セクエストゥラータ 作家名:村崎右近