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セクエストゥラータ

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 パオロに会うためにヴェローナの警察署を訪れたのは、奈津美が誘拐されたあとのことだ。由佳のデジタルカメラは電池が切れていたから、奈津美の顔写真なんか見せられるはずもない。
 パオロが知っているのは、僕と由佳の二人だけのはずだ。奈津美を知っているとすれば、それは“偶然”巻き込まれたわけじゃないという証拠になる。
 パオロはこの事件に関与している。
 でも、パオロが奈津美の協力者だったら、追い掛けろ、なんて言うだろうか?
 黒木先輩は、試合が終わるまで待つように、と言ってきた。
 ロビーで僕の前に姿を現した奈津美の行動が、黒木先輩にとって計算外の出来事だったとしても、あのとき奈津美が口にしたのは、試合が終わるまで待つように、という黒木先輩が言っていたのと全く同じ内容だ。
 ただ時間が過ぎるのを待つようにと言ってきている状況において、僕に違和感を感じさせたパオロのあの発言は、明らかに失策だ。
 パオロが協力者だった場合、その役割は僕の監視だろう。僕が必要以上に騒ぎを大きくしないように見張っているんだ。
 しかし――
 いまいち連携が取れていない気がする。奈津美の協力者であれば、あの場面は見て見ぬ振りをするのが妥当な判断だろう。
 ヴェローナの警察署に行くことを決めたのは、他ならぬこの僕だ。
 あのとき一緒にいたのは、由佳だけだった。
 奈津美が、貴方たちを共犯にしたくなかった、と言っていたことから、由佳はこの件には無関係なのかもしれない。
 だとすれば、僕が警察署に行くと言い出さなければ、パオロはこの件に関わっていなかったはずだ。少なくとも、こうして僕と行動を共にすることはなかったと思う。
 由佳は無関係なのだろうか。
 じゃあなんで、由佳の出国記録が存在していないのだろうか。
 由佳はどこに?
 黒木先輩がミラノの空港まで迎えに行っているものだと思っていたけれど……空港までの移動を手配したのはパオロだ……

 まさか、パオロが由佳を?


作品名:セクエストゥラータ 作家名:村崎右近