セクエストゥラータ
「日本人ね……母親はボローニャに住んでいたから、ボローニャに関係のある日本人の線が濃いけれど……」
愛花さんは言葉を濁した。
ボローニャには複数の日本企業が進出していて、日本人の数は少ないとは言えないのだそうだ。
「今の日本代表に関係している人だと思うんです」
「そう言われてもねぇ……」
パオロの携帯電話が鳴った。どうやら愛花さんの現在位置を報告してきたらしい。パオロは苦笑いを浮かべていた。
「そうだ、パオロ。二十三年前、ボローニャに関わっていた日本人を知りませんか?」
ダメモトでパオロに訊ねてみると、意外にもすんなりと答えが返ってきた。
「二十三年前なら、ボローニャに原田がいたな」
パオロの言うボローニャとは、サッカーのチーム名のことだ。
「え?」
「知ってるだろう? 日本代表の監督だ」
「代表…監督?」
この瞬間、僕の中で糸が繋がり始めた。