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推理げえむ 1話~20話

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「そう……。もしかしたら、瑞穂さんが死亡したのは偶々じゃないかもしれないよ……」
「え!? 何か解ったんですか先輩!?」
「ああいや。まだはっきりとした証拠があるわけじゃないんだけど、ちょっと調べれば、犯人も、証拠もすぐ見付かると思うよ」

※春日の言う通りだとして、瑞穂を計画的に殺害する方法はあるのだろうか?

「秋山君、すぐに検視医さんに連絡して、瑞穂さんのア○ルを重点的に調べるよう言うんだ!」
「ア、ア○ルですって!? ア○ルをよく調べろって言うんですか!?」
「そうだ。穴が空くほどよく見てくれと頼むんだ。きっと酷くかぶれているはずさ」
「かぶれ?」
「そう。瑞穂さんは犯人の策略に嵌り、ア○ルがかぶれてしまったんだ。つまり、瑞穂さんはシートに座りたくても痛くて座れなかったんだよ」
「え、し、しかし……そんな所を狙ってかぶれさせるなんて可能なんですか?」
「可能さ。瑞穂さんの家に忍び込み、そこにあるシャワートイレのタンクの中に、かぶれの原因となるものを混入させればいい」
「シャ、シャワートイレ!?」
「そう。最近の新築物件なら、便座にタンクが内蔵されていて、シャワートイレも最初から付属しているタンクレストイレってのが多いんだけど、瑞穂さんの場合、部屋が多少古いということで、シャワートイレは後から取り付けるタイプのものと見た。後付けの場合、トイレの水を流すタンクとシャワー用のタンクは別々だから、比較的簡単にかぶれの素となるものを仕込むことができるってわけ。かぶれの素と言って一番に思い浮かぶ成分は漆に含まれるウルシオールやサクラソウのプリミン辺りだね。瑞穂さんは会社員だから平日の行動パターンを読むのは容易いが、瑞穂さんの不在を狙って家に忍び込もうとしたら合鍵を作っておく必要がある。ライダー同士での集まりの席で瑞穂さんに酒を飲ませ、酔い潰れている隙か、瑞穂さんがここでライディングを行っている間にバッグを漁るなどして、こっそり合鍵を作っていたということが考えられるね。おそらく昨日、タンクへの仕込みを終えた犯人は深夜にここを訪れ、計算した高さにワイヤーを張ったんだろう。瑞穂さんはそうとも知らず用を足した後いつものようにア○ル洗浄をして、犯人の思惑通りかぶれア○ルになってしまったんだよ」
「そ、それじゃあ、それが原因で瑞穂さんはシートに座れず、立ち乗りしたままワイヤーに突っ込んでしまったということですね!?」
「そう。漆など、手に付いただけでも痒いのに、ア○ルなんてモロ粘膜だ、相当痒かったに違いない」
「さっさと病院行けって話ですよね」
「まあね。でも、それ程までにバイクに乗りたかったってことじゃないかな」
「ああなるほど、本当に好きな事をするためなら、多少の事は我慢できる、ってわけですね? それ解ります。ボクにもそういったところありますね。ボクくらいのカレー好きになると、たとえカレー2、ライス8だとしても充分美味しく頂けますもん」
「んん? なんか違くね? まあいいや。というわけで、一番怪しいのは彼女を盗られたっていう相澤さんという男性だね」
「なるほど……ではその犯行を裏付けるものはありますか?」
「まず何度も言うけど、瑞穂さんのア○ルを念入りに調べることだね。そしてシャワートイレのタンク内を調べること。何かしらの痕跡があるはずさ」
「了解です。しかし、どうでもいいですけど、先輩の方がよっぽど下品な気がするんですが」
「気のせい」
「そ、そうですか……で、では証拠は?」
「残念ながら、合鍵も余ったワイヤーもかぶれる汁も全て処分されているだろう」
「そ、そんな……ではどうすれば?」
「相澤さんがどこかで合鍵を作ったことがないか鍵屋さんをしらみつぶしに当たるんだ。そしてもう一つ、相澤さんは元カノさんの命も狙っている可能性がある」
「な、何ですって!?」
「元カノさんは体調を崩していたらしいじゃないか。相澤さんは、自分から瑞穂さんへと乗り換えた元カノさんのことも恨んでいて、以前から、瑞穂さんにしたのと同じ手口で、元カノさんに毒を盛っていたと思われるね」
「と、ということは、元恋人の部屋に侵入して……!?」
「うん。恋人同士の時に、部屋の合鍵を受け取っていたとしても不思議じゃない。別れ話の時には合い鍵を返したかもしれないけど、合い鍵のスペアを作っていたのかもしれない。その鍵を使って元カノさんの部屋に侵入したんだよ。もしかしたら今、元カノさんの体にはかなりの毒が蓄積しているのかもしれないよ……」
「な……なんてことだ、すぐにお医者さんに連絡して、検査して貰わないと」
「うん。そして相澤さんは元カノさんを殺害するまでは毒を仕掛け続けようと考えているはずだから、そちらの方の証拠はまだ隠し持っているに違いない」
「なるほど! わかりました、じゃあ先に、元カノさんが運ばれた病院に連絡だけは入れておいて、たぶんまだこの練習場内のどこかに相澤さん居ると思うんで、証拠集めにあちこち走り回るのもメンドいし、もうこのまま自首するよう説得しに行きませんか?」
「わお。そんな台詞吐く刑事は日本で君だけだろうね」

 春日と秋山は見付けだした相澤を両サイドから挟み込み、『今自首しないと一生後悔しますよ』と何度も何度も耳元で呪いのように繰り返し、相澤を、今自首しないと一生後悔するかもしれない、という気にさせることに成功した。
 相澤は春日が言った方法で瑞穂を殺害したことを認め、部屋へ忍び込むための合鍵は練習場近くで鍵屋に造らせたことも白状した。
 病院に運ばれた女には、やはり中毒の症状が出ていたが、医師の的確な処置により、大事に至ることは無かった。
 
 
 
  第十九話 豆腐の角に頭ぶつけて……殺人事件

「ちんすこうーーーーー!!!」
 沖縄へと思いを馳せた秋山の雄叫びが、超高層ビルの巨大な内部空間に響き渡った。
「更に、丁寧語にするために頭に『お』を付けるとちょっと複雑な感じになります」
「付けんでいい」
 春日がうんざりした様子で言った。
「おちんすこうーーーーー!!!」
「うるさいよ!」
「先輩、ふと思ったんですが、飛行機の沖縄線のキャビンアテンダントは機内でお菓子を配るとき、『おちんすこうはいかがですか?』って言うんですかね?」
「しらねえよ」
「更に更に! マンゴーの頭に『お』を付けることによって―」
「もういいだまれ!」
 二人は完成を目前に控えた高層建築物の中にいた。四方をテナント用スペースに囲まれた中央フロアは一階から最上階の三十階まで吹き抜けになっており、秋山はフロアに降り立つなり天を仰ぎ、静寂を切り裂く雄叫びを上げたのだった。
「ふうっ……」
 秋山は満足気に額に浮かんだ汗を手の甲で拭った。
「何やりきった男の顔!? バカじゃないの!」
「いやあ、あんまり静かだったのでつい」
「いいから、さっさとここで何があったのか説明したまえ」
「あ、そうでした、すみません」
 秋山は手帳を開き頁を捲った。