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推理げえむ 1話~20話

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「エリア51って聞いたことある? ネバダ州にあって、そこには空軍基地がるんだけど、昔からそこにはUFOが何機も収容されてるって噂があったの。そしてアメリカはそのUFOを日夜研究してて、今まで蓄えられた知識はもの凄い量になってて、もしアメリカが隠し持っている技術を一気に公開したら、世界中がパニックになるとまで、まことしやかに囁かれていたのよ。エリア51の元職員があそこにはUFOなんて隠されていないと証言したって話も有るけど、UFOはもう別の場所に移されてて、『今は、もう隠されていない』っていう意味だとあたしは解釈していたわ」
「…………」
「…………」
「それでね……今アメリカの経済がどん底でしょ? もう何週も連続で全米が泣いているの。街は失業者で溢れ返り、このまま放っておくともっとマズイことになる……どこかで立て直しを図らないといけないの! そう! もしひた隠しにしているテクノロジーが本当に在るのなら、今使わずして何時使うの!? 貧困に喘いでただじっと耐えるなんて殊勝な人種じゃないでしょアメリカ人って! ここまで切羽詰まっても何も出さないのはなぜ!?」
「…………」
「…………」
「……答えは一つ……何も無いのよ……。出し惜しみしてるとかそんなんじゃなくて……出す物自体が無いの……隠されたスーパーテクノロジーなんて……どこにも無いのよ……」
 夏目が唇を噛んだ。鎖を掴んでいた手に力が入る。今にもまた猛々しくブランコを漕ぎ出しそうな雰囲気であった。
「ま、まあまあまあ夏目ちゃん! 抑えて抑えて!」
「……はぁ……。なんかあたし、オーパーツとかUMAとか超常現象とかが、科学の名の元に一つずつ解明されていくたびに、何か大切なモノをどんどん失っていく気がするわ……なかでもエリア51は期待度高かったのに……あたしなんて日頃、もうキャトられて性別変えられてもいいくらいの気構えでいたのよ!」
「アグレッシブか君は」
「だって、それくらいのサプライズがないとキャトられ損じゃない!」
「そ、そうかな? でもまあ、エリア51? それだって、もしかしたらこれから先に何か動きがあるかもしれないし、まだ他にも、世界には不思議がいっぱい残ってるじゃないか」
 切れて血が滲んだ人差し指を舐めながら、春日は夏目を励ました。
「まあねぇ……中でも、この世で最大の不思議、『宇宙』がまるまる残ってはいるんだけど、こればっかりは確かめようもないしねぇ……」
「それは違うよ夏目ちゃん! この世で最大の不思議は宇宙なんかじゃない! この世で最大の不思議、それは―」
「それは恋。とか言うつもりじゃないでしょうね?」
 夏目が氷のような目で言うと、身体を硬直させた秋山が口をパクパクさせた。
「はぁ……恋、ね……。そうね、もうこうなったら、カレシでもつくろっかな」
『マジっすか!!!』
 春日と秋山が跳び上がった。
「ええ、そして、その男の子と吊り橋を渡って、橋がユラユラ揺れて、恐怖心からくるドキドキを脳がトキメキと勘違いして、本当に相手のことを好きになってしまうかどうか、検証するの!」
 ずざざ、っと男二人は地面に突っ伏した。
「じ、じゃあ最初はそのカレシのこと、好きでもなんでもないんじゃないか!」
 顔を砂まみれにして春日がツッコミを入れた。
「それ最終的にときめかなかったらそのカレシどうなんの!? 用済み!? やめてあげて、トラウマになるから! そんなことにいたいけな少年を巻き込まないであげて!」
 秋山も目に涙を浮かべて懇願した。
「フン。じゃあ少年じゃなければいいわけ? ならアッキーかスガッチ。どっちかあたしと付き合う?」
『ええええええええっ!?』
 春日と秋山が吹っ飛んだ。
「ああでも、うーん、そうね。二人ともいい人だし、大好きよ。だけど、これであともうちょっと、超能力者とか、タイムマシン発明する超天才とか、宇宙人の類ならなぁ」
「それもう完全に別モノじゃないっスか!」
「それ基本ボク等に興味ゼロじゃないっスか!」
「はう……どっかその辺に転がってないかな……出会いとか、不思議とか……」
「な、夏目ちゃんが望むようなモノがその辺に転がってたら街中パニックになるって話もあるよね」
 秋山が引きつった笑みを浮かべながら膝に付いた泥を手で払った。
「でもあたし、ただ待ってるだけの女じゃないわよ! 自分からアッチの世界に少しでも触れようと努力したんだから! 例えば、ネットで魔術の本、取り寄せて読んだり」
「ま、魔術ッスか」
「そう。でもあたしが読んだ本は、狙った相手を呪い殺す方法だの不幸にする方法だの、陰湿なモノばっか、もう全然あたし好みじゃないし! がっかりよ! スガッチとアッキーに掛けた、悲鳴を上げて飛び起きる程恐ろしい夢を見せるっていう、ナイトメアの魔法も効果無かったし」
 ずがが、っとまたも二人が盛大に地面に突き刺さり、砂ぼこりを上げた。
「結局掛けてんじゃん! バリバリ掛けてんじゃん!」
「かかか勝手に人の体で実験しないでよ!」
 春日が絶叫し、秋山が震え上がった。
「そう固いこと言わないでよ。せーぜー寝不足になるくらいじゃない。もし掛ったら、お詫びに何か美味しいものでも御馳走しようと思ってたんだから。結局掛らなかったし、事前に断ったとしても、絶対OKしないでしょ?」
「あああ当たり前だよ! ま、まさか夏目ちゃん、ボク等の知らないところで他にも何かしてるんじゃないでしょうね!?」
「してないしてない。なんか魔術って間違うと、起きる物事をなんでもかんでも自分の都合の良いようにしか解釈しなくなったり、たっぷり自己暗示掛けて更に深みにハマっちゃいそうだから。そう、やっぱり暗い部屋でジメジメするより、お日様浴びながら地道なフィールドワークが一番確実だと思うわけよ、うんうん。と、いうわけで、二人ともこれから、何か事件があった現場に行くんでしょ? あたしも連れて行ってよ」
『…………は?』
 春日と秋山がぽかんと口を開けた。
「だってさっき、二人とも車から降りて来たとき、背筋や手足を伸ばすような、疲れた素振りは全く見せなかったでしょ? これは長時間同じ姿勢で車に乗っていたわけじゃないってこと。それとスガッチの指の傷、それ、本の梱包を解いてるとき、紙で切ったんじゃない? 本や雑誌を扱う人がよくやる怪我よね。傷がまだ真新しいってことは、スガッチはさっきまでお店で仕事してたってこと。後、アッキーのズボンに付いた泥。それ、この公園で付いたものじゃないでしょ?」
 夏目が靴の爪先で地面の砂を蹴った。
「いくらアッキーでも、平日に泥んこ遊びするほど暇じゃないでしょ。となれば、何処か泥で汚れるような場所で何かがあって、困ったアッキーがスガッチに応援を頼んで、店はどうせ暇だから閉めて、これからその場所へ向かうところだったんじゃないか、って思っただけよ」
『…………』
 秋山はまだ固まっており、春日は苦笑を浮かべている。
「でも勘違いしないでよね、事件が起きて喜んでるわけじゃないわ。不謹慎じゃない」
 夏目はひょいっ、と肩を竦めた。が、春日と秋山は夏目の瞳の奥にチリチリと灯る火花を見逃さなかった。