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推理げえむ 1話~20話

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「ああそうそう。僕達の友人で夏目君と言うんだけど、学校では新聞部として活動していてね。それで是非、こもりんを取材してみたい、と」
『こもりん?』
「夏目君命名の、君のアダ名だよ。ひきこもりだからこもりん」
『……あの……こちらとしては関わり合いになりたくないんですけど……』
「どうして? とても利発でかわいい子だよ? 僕と秋山君は彼女を妹のように思っているくらいさ」
『いーや妹ってのは、すこし頭がさわやかで、ドジで、兄に頼りっきりな方がかわいい!』
「いや、君は頼りになるどころか、部屋から一歩も出てこないじゃないか……」
『てか逆に、ぼくに何を期待して取材したいのか聞きたいね! 部屋は一年中真っ暗で、足の踏み場も無いくらい散らかってて、賞状やトロフィーは一個も無いのにフィギュアとかはいっぱい飾ってあって、ゴミ箱はティッシュでパンパンで、語尾がござるなら満足なの? それならご期待に添えないから! ぼくの部屋割と整然としてるから!』
「そこをなんとか。君への取材が駄目となると、シワ寄せが僕等へ来ちゃうから」
『知らないし。どーせ取材ったってアレでしょ? 秋山さん同伴でしょ? ぼくが何か変な素振りを見せようもんなら、即タイホの勢いでしょ!? 目の前にぼくが居るのに、秋山さん間に立たせて「最近ハマっているものは何? って聞いて」ってやるんでしょ!?』
「いや、いくらなんでもそこまでは……」
『取材させたらさせたで、社交辞令でも今日は参考になりました、くらい言ってもバチは当たらないのに、期待外れとなると「つまんない」とかハッキリものを言うタイプの女と見た!』
「正解」
『あああっ! 考えただけで恐ろしい! 予想通りのヲタクっぷりなら、それはそれで「キモーイ」とか言って引くんだろ!? どないせーちゅーんじゃあ!』
「いやでも、ここは一つニーズにお応えして、某ミニスカ魔法少女について熱く語りなよ! 小一時間語りなよ!」
『そんな特殊技能ねえよ!』
「ならせめて、今から頑張ってゴミ箱をパンパンに」
『するかぁ!』
「そんな、僕がこんなにも頭を下げているのに!」
『見えん見えん。てか絶対下げてないし』
「交友関係を広げるつもりでさ。女子高生の生制服が拝めるんだよ? ほらあれだ、萌えー、じゃないか」
『そんな言葉に騙されるか! 拝まれるのぼくの方じゃん! ぼくを観察しに来るんじゃん! 萌えーじゃねえよ! 萎えーだよ!』
「もう、さっきからワガママばかり、いい加減にしてくんないかな」
『えっ! 何でぼくが悪い感じになってんの?』
「あのさぁ、困るんだよね、このくらいの要請、快諾してくんないとさぁ。こっちにも都合ってもんがあるんだからさぁ」
『えっ! ぼくの都合は!? アレッ!? いつの間にか交渉じゃなくなってきてるよ? 命令に近いものがあるよね? 不可避ルートなの? これ不可避ルートなの?』
「よく考えたまえよ。ご両親に迷惑が掛るのは、君も本意では無いだろう?」
『マフィア!? 命令通り越して、もはや脅迫だよね!? ぼくそんなに悪いことした!?』
「勘違いしないでくれたまえ。こちらはあくまで君の意志を尊重し、判断は君に委ねるよ。……さあ、どうするね?」
『……ふっ……ふふふ……はははははっ! わかったよ! 好きにしろよ! もうどうでもいいさ! いっそ殺せ、殺せよォ! そうさ、どうせぼくなんて社会のクズだ! 家に居れば白い眼で見られ、外に出たら出たで挙動が怪しいと職務質問を掛けられる! それにあれでしょ、何か事件があったとき、警察が現場付近で聞き込みとかしてるけど、あれって本当は不審者の目撃情報とか集めてるんじゃなくて、「警察だ」って名乗ったときの反応見て、必要以上に警戒したり動揺したりする奴を容疑者の候補に挙げてるんでしょ! きっとそうでしょ!? そりゃこちとら視線恐怖症なんだから別にやましいことがなくてもオドオドするっちゅーねん! ひきこもりナメんな! これだからおちおちコンビニにも行けやしねえ!』
「…………ふ、冬木君……君も、苦労、ぐす……してるんだねぇ……ぐす」
『同情するなぁあああ! 余計に悲しくなるわぁあああ!』
「ごめんね、勝手なこと言って。夏目君の方にはちゃんと僕の方から断っておくから。本当にごめんね」
『気ィ使うなぁあああ! ……はぁ……でもぼく等って警察とかにはホント苦労させられるんだよ。犯罪者予備軍とか言ってすぐ疑いの眼向けられるし。秋山さんは随分マシな方だけど。ちょっと前にも変死体が出たとかでダチの所に、刑事が話訊きに来たらしくてさ』
「変死体だって? 事件でもあったのかい?」
『ちがうちがう。酔っ払ってプールに入った馬鹿が溺れたってだけの話。その男が住んでるマンションの部屋には室内プールがあって、んで、同じマンションの別の階に住んでるダチのところに刑事が来たわけ。でもそのダチに言わせればその男は同情の余地も無い、死んで当然のコソドロ野郎なんだってさ』
「コソドロ野郎だって? 何があったの?」
『その、ぼくのダチ、漫画書いててさ。全然プロとかじゃないんだけど、でもいつかは、って感じでシコシコ頑張ってたわけ。で、新人賞に応募するってんで作品の構想びっちりノートに書き込んでたらしいんだけど、半年かそこら前に、引越しのどさくさでそのノート落したって言うのよ。でもまあ、ネタ自体は頭の中に在るから、別に? って感じだったらしいんだけど、何カ月かしてびっくりすることが起きたって。自分が書こうとしてたはずの話を別の人間が書いてて、連載とか始まって、しかも発売当初から神漫画扱いの状態で! 当然ダチはその漫画家と出版社にモノ申したんだけど、その漫画家、既にそこそこ売れてた奴だったらしくてさ、誰もダチの話を信じてくれなかったんだって……。で、その漫画家ってのが、プールで溺れてた男ってわけ』
「ううむ……」
 ―ある一つの物語があったとする。そして、その物語は自分が書いたものであると二人の人間が主張していたとして、そのどちらが本当の作者なのかをはっきりさせなければならないとき、一昔前なら続きを書かせてみれば良い、といわれた。ニセモノには続きを書く事が出来ないからだ。しかし、もうありとあらゆるネタが出し尽くされた感のある昨今では、物語がどのように展開したとしても、どこか他のところで、似たような物語が既に在ったりする。そのため、真の作者は自身の独自性を証明するのは極めて困難であるといえよう。どうやったってかぶってしまうのだ。そう、だから話の設定が古かったり、展開に目新しさが無かったとしても、これはもうしょーが無いことなのだ。
『あの……なんか……読者への挑戦どころか読者への言い訳始まっちゃったんですけど……』
 いや、これは読者へ言い訳をしているのでは決してなく、斬新なアイデアが思い浮かばなかったとしても、別に自分が悪いわけではないんだ、と自分を励ましているのだ。
『完全に負け犬の考え方じゃねえか!』
「ふむ。このように、あえて醜態を晒すことによって目先の笑いを取ろうとするのも、割とよくある手法だね」
『いや、春日さん、冷静に解説しないで……』