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推理げえむ 1話~20話

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「こ、これでも頑張ったんだよぉ。帰りにちゃんと阿部さんが運転していたという車を見に、庭の奥に位置するガレージを覗きに行ったんだから。このガレージがまた広くて! 五台くらい停められるかな? 普通にここに住めるぞ、みたいな。でも停めてあるのは車一台だけで、しかも何かやたら端っこ、壁ギリギリのところにポツンとベンツが停められてんですよ、何ですかねアレ」
「へえ?」
「後ガレージには、色々な工具の他にガソリンタンクが幾つかありましたね。タンクにハイオクとかレギュラーとか書かれてました」
 それを聞いて春日が深く頷いた。
「……なるほどね、これで謎が解けたよ。ちょっと君達、僕の推理を聞いてくれるかい? 今回の事件……犯人は金田社長だよ」
 春日があまりにもさらりと吐いたため、夏目は口を開けてしばらくポカンとしていた。

※金田はどのような手口で安部を殺害したのだろうか? そしてその遺体をどのような方法で移動させたのだろうか?

「……は? な、なによ犯人は社長って……推理を聞けって……今の話を聞いてただけで何が解ったっていうのよ……。ほ……本当なの?」
 夏目は思わず秋山に訊ねた。
「多分ね。でも先輩、いつも大体こんな感じだよ」
「……………………」
 夏目は春日が推理を語るところを見るのはこれが初めてだった。
「……フ、フン。でも問題はその推理が当たっているかどうかよね。……それじゃあ聞かせて貰いましょうか」
 夏目の眼が好奇心でギラリと光った。
「うん……。僕は安部さんを殺害した犯人は……金田社長だと思う。動機はやはり脱税に関することだろう。査察官が動き出してる時点でもう金田社長はほぼクロと考えていいと思う。そして、脱税がばれれば金田社長の会社は信用を失い壊滅的なダメージを受ける。そこで、脱税の証拠に深く関わっている安部さんの口を封じようと考えたんだろう。まず、十八日の未明、そのとき偶然起きていたか、寝ていたけどトイレに起きたときにでも停電していることを知った社長は、電力会社に連絡を入れて状況を確認し、電気の復旧に時間が掛ると踏み、停電を口実に阿部さんを呼び出すと同時に殺害する方法を思い付いたんだ……。そして全ての準備を整えた金田社長は早朝に阿部さんを呼び出し、感電死させた」
「一体どうやって感電死なんか」
 秋山が訊いた。
「自家発電機を使ったんだよ」
「自家発電機!?」
 今度は夏目が声を上げた。
「うん。午前四時から午前十時まで停電だったにも関わらず、金田社長は午前六時に顧問弁護士へFAXを送っている。一般回線を使用する電話は電話線から僅かながら電力を得ているため、停電時でも通話は可能なんだけど、コンセントから電力を得ているFAX機能は話が別。停電時は使用出来ない。また、ガレージには車がベンツ一台しかないのに、ハイオクとレギュラーのガソリンタンクがあったのはなぜか? 例えば、車の燃料にハイオクを使用していた場合、レギュラーを混ぜることは無いし、日によって使い分けることもまず無い。なのにガソリンタンクが別々にあったということは、レギュラーガソリンを燃料に動くなんらかの機械があったという証拠だよ」
「な、なるほど」
「金田社長は自家発電機を使用して弁護士に連絡を行った後、停電なので自家発電機を動かしているんだがどうも調子が悪いから調べてくれ、とでも言って阿部さんを呼び出したんだろう。社長宅に訪れた阿部さんはそのときに靴と携帯や財布の入った上着を脱いだんだと思う。そして阿部さんはつっかけを履いてガレージまで行き自家発電機の具合を診ることにした。となると、一旦発電機のスイッチを切るにしたって、一度は必ず発電機に触れなければならないってことだ。それこそが罠だったんだよ。発電機内部の配線を剥き出しにしておき、阿部さんが発電機に触れているときを狙って上から大量の水を被せる。すると閉回路が形成され漏電が起き、安部さんは感電する。わずか数ミリアンペアのスタンガンでさえ皮膚には火傷の跡が残り、電圧との兼ね合いによるけど、一般的に家庭で使用される数十アンペア程度の電流でも人体にとっては超危険なんだ。通常なら発電機は直ちに安全装置が作動して電力をストップさせるんだけど、よほど強力な発電機だったんだろうね。電気にとっては一瞬でも十分だったんだ。阿部さんはあの通り感電死してしまった……。そのときのショックで発電機が故障してしまったため、それ以降午前十時までは家電が使用出来なかったんだよ」
「な、なるほどね。……でも、ここからが問題よね。どうやって遺体をあそこまで移動させたわけ?」
「そうですよ、共犯者がいるんですか? それとも弁護士とグルになってウソを?」
「いや、弁護士はアリバイ証人に利用されただけだよ。それとは別に、知らず知らずの内に運び屋に仕立て上げられた人物がいるのさ」
「運び屋? 誰ですか?」
「ホームがレスの人」
「ええ!? なんで!?」
「社長宅のゴミを漁る人ですか? いやいやいや、いくらなんでも遺体なんか持って行くわけないでしょ」
「じゃあ、遺体が大きな鞄に入れられていたとしよう。そして遺体を覆い隠す程の札束がぎっしり詰められていたとしたら?」
『へ?』
 夏目と秋山が間の抜けた声を出した。
「ホームがレスの人は鞄に遺体が入ってるってことに気が付かなかったんだよ。お金が無くて困ってる人なら、そのまま持って行っちゃいそうじゃない?」
 春日がニヤリと笑った。
「そ、そんな……ぎっしりって……い、いか程……?」
 秋山が恐る恐る訊いた。
「さあ? 三千万円だか四千万円だか、もっとか。相当入れないと遺体隠れないだろうしねぇ」
「よ、四千万……?」
 秋山が唇をぷるぷるさせた。
「金田社長は殺人がばれれば地獄行き。罪を逃れるためなら幾らでも出そうと思ったんじゃないかな。ウワサの金庫の中から」
「ああ……」
 夏目は息を洩らした。
「で、ホームがレスの人はその名の通り家が無いわけだから、ゆっくり鞄の中身を物色出来る、適当な場所を求めて移動することになる。実は遺体が入っているわけだから相当重い。旅行用の鞄でキャスターが付いた、ゴロゴロと引っ張ることができる鞄が使用されたんだと思う。そして移動した先が、偶々あの建設予定地だったわけだ。時刻は九時過ぎから正午の間」
「そうか、じゃあ現場付近で金田社長の目撃情報が無いのは当たり前なんですね」