カムイ
厳しい寒さに耐えられずに次々と死んでしまったのだが、馬3頭分の飼料を貯蔵していた。その残りをいくばくか背負い、毎日夜が明ける前に雪の原野に出て、馬の通り道に置いた。幸い、安定した天気が続いている。
人間の臭いが付いた枯れ草に、初めは警戒していた月であったが、月が口にすると連れの馬たちも食べ始めた。やはり月が、群れの統率を取っているのだろう。
枯れた立木に隠れてそれらの動きを観察していたのだが、飼料を置いた場所に、前の日よりも近くへと少しずつ近寄って、食べている間中はじっとして動かずに、その様子を眺めていた。
そうしているうちに月からも、カムイの存在を意識し始めたようなふるまいを、し始めたのである。
そして9日目にしてついに、カムイの手から直接飼料を受け取り、食べたのだ。
月に手が届くほどに、すぐそばまで近づいて行っても離れていくことはしないで、頭を少し持ち上げて、ブルルルッ、と小さく唇を震わせただけで、雪の上に置かれている飼料を食べ続けていた。
カムイは、その飼料である枯れ草を手に取り、月の口元まで持っていった。するとためらうことなくそれを口に入れ、モシャモシャと口を動かし食べたのだ。
連れの馬たちはまだ警戒を解くことはなく、カムイとは一定の距離を保ったままであったのだが。