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カムイ

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「とりあえずは、濡れている着物をすべてはぎとって、そこに寝かせました。するとこのチニタがあなたの胸に耳を当てて、まだ生きている、と言うのです。それでチニタは裸となり、あなたを温め続けました。もう、2日になるでしょうか」
 己のそばにいて肌を合わせていた女がチニタ、というのだと知った。
 感謝の気持ちを込めて、チニタを見つめた。チニタは顔を赤くして、そそくさと部屋を出ていった。
「私はアイヌモシリ(アイヌの国)のコタンコロウル(酋長)、タナイヌといいます。春になれば此処を出て、川のほとりにあるコタン(村)に移動します。好きなだけいてください」

 チニタは、両手で大きなかめを携えて戻って来ると、鍋の中の食べ物をすべて男の椀の中に掬い入れ、かわりに雪と、穀類や木の実、干し肉などを入れていった。
 アイヌの風習で、温かい食べ物を旅人にふるまうことはもちろん、外から戻ると体を温めるために、鍋の中では絶えず何かを煮ているのだという。
 男の為には、もっとも貴重で栄養に優れている熊肉を入れていたのだとか。いつ目覚めるのか、分からないというのに。

「あなたを、なんとお呼びすればよいか」
「私は・・・」
 うつむいて黙り込んだ。
 タナイヌはしばらく思案した後、微笑んで言った。
「カムイ、と呼びましょう。カムイ、というのは、神、という意味であり名誉ある名前となります。あなたは、死の世界、から戻られた。神の意志があなたに宿り、そうさせたのです」
作品名:カムイ 作家名:健忘真実