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校正ちゃん、再び

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「あのさ、キミ、相変わらず、あたしのこと勘違いしたままでしょ?」
「勘違いって、何を?」
「だから、あたしが何の為に、キミの頭の中に埋まってるのかってことよ」
「そりゃ、文章の間違いを正すため……」

 言いかけた言葉を遮って校正ちゃんは僕の目前に迫り、短い前足を突きつけた。

「ほうら、やっぱり勘違いしてる。ソレは人体という実体を持ったキミにしか出来ないことでしょ? あたしは、物理的には単なる集積されたデータに過ぎないバーチャルな存在だって、いつも口を酸っぱくして言ってるじゃない? かれこれ1年以上も一緒に過ごして来たのに、まだ少しも理解してくれてないなんて、悲しくて涙が出てきちゃう……」

 ウソをつけ、ウソを。校正ちゃんが、そんな繊細で “乙女チックな感性” を持ち合わせているわけがない。他人が泣こうが喚こうが、全くお構いなしで平然としていられる “冷血ぬいぐるみ” のクセに。それこそ1年も一緒にいるんだから、既にバレバレだっての。それに、実体がないことをわかってるからこそ、何とか逃げられるんじゃないかと期待したわけだしね。
 あと、涙なんてドコから出るんだよ? そもそも “目” が無いだろ、目が。もしかして、あの表示ランプの隙間から漏れてくるとか? そんなんだったら面白いから、見てみたい気もするけどさ。

「あのね、全然わかってないみたいだから何度でも言うけど、あたしは、キミの指導を担当する “教育係” であって、具体的な訂正指示や修正確認なんかは、飽くまでキミの役割であり使命なんだよ。そうじゃないと校正者としての技術や心構えがいつまで経っても身につかないじゃない? いい加減にさ、自分の立場をキッチリ理解しなさいよね!!」

 ぐぬぬ。そんなことは、それこそ耳にタコが100個できるくらい聞かされてるからわかってるさ。でも、新聞社や出版社、印刷会社なんかに勤めているならともかく、単なる一般的サラリーマンにすぎない僕が、どうして校正者なんぞの訓練を受けないといけないのか? こんな口うるさくて煩わしいデバイスを埋め込まれまでして、やんなきゃならないことなのかねぇ?

「わかったよ、わかったから。そんなにキツく言わなくたっていいだろ」
「いいえ。ちっともわかってないよ、キミは!!」
「わかったって言ってんだから、もういいじゃないか」
「いいえ。やっぱり少しもわかってない。さっきも言ったけど、あたしと1年以上もコンビを組んでて、キミもズブの素人ってわけじゃないんだからさぁ、そろそろ自覚してくれたっていいじゃない。あたしだって、いつまでもキミと一緒に居られるわけじゃないんだからね!!」
「え……?」

 初めて聞いた。何? 校正ちゃんって、頭に埋め込まれたらずっとそのまま一生取れなくなっちゃうわけじゃないんだ? へぇ、そーなんだ。

「おっと、これは、まだキミに伝えるのは早かったかな? ごめん、忘れて……」
「何、何? 校正ちゃんって “期間限定” だったの?」
「何よ、えらく嬉しそうにして。そんなにあたしが頭の中に居るのがイヤなの?」
「……いや、そういうわけじゃなくてさぁ」
「ま、いいわ。ちょっとだけ説明したげるよ」

作品名:校正ちゃん、再び 作家名:ひろうす