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法定寿命~双つの世界~【前編】

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 これはもう宝くじの一等当選確率さえ超えている。もし不正解、つまり婚姻(こんいん)が失敗だったと分かった場合、それ以降、子供が生まれることが期待できるであろうか?どうだろう?もっとチャンスを与えようではないか。AがダメならB。BがダメならC…、そう、人間誰しも間違いはある。パートナー選びをもっと柔軟に行うことはできないだろうか?」

 この提案に対し、幾(いく)つかの婚姻(こんいん)制度見直しの案が検討された。

・見直し案[其の一]
 基本的に一夫一妻制ではあるが、子供が出来るまでは浮気をしても不貞(ふてい)行為とは認めず、浮気をされた側には慰謝料請求の権利は発生しない。一方が別れる意思を示せば、他方はそれを無条件で認めなければならない。つまり相思相愛で無くなった時点で婚姻(こんいん)関係は法的に解消される。子供が生まれるまでという条件付きではあるが、パートナー選びが柔軟になることが予想される。

・見直し案[其の二]
 婚姻(こんいん)制度自体を廃止し、事実上の自由恋愛状態にする。そもそも人間は有性生殖なのだ。これは様々な個体が交わり、結果、子孫に多様性を持たせる目的がある。環境が激変しても多様性を持った種ならば、その変化を乗り越えるチャンスも多くなる。そう考えれば現在の婚姻(こんいん)制度がいかに合理的でないかは明らかである。ちなみに生まれてくる子供の扱いについては、子供は社会の宝であり、社会が子供を育てるという理念の下、全ての子供は公的な施設に入所し、国、あるいは地方公共団体の責任で育てる。どうしても育児がしたいという人は保育員になればよい。子育てによる経済的、精神的負担が無くなり、自由に恋愛できることから間違いなく出生率アップになるだろう。しかも子育てが施設で行われることで幼児虐待が無くなり、何より子供間の経済的格差もない。大人だけでなく、子供にとっても大きなメリットがある。

 見直し案其の一は一部地域限定で社会実験として実行するかどうかの議論に入った。しかし「デキ婚」が普通になってしまった現在ではその効果を疑問視する声も強い。そのため、外国の婚姻(こんいん)制度「パックス」を推(お)す声が広がりつつある。其の二については、この政策が失敗した場合のリスクが大き過ぎるため、つまり施設の大勢の子供の面倒を誰が見るのか等といった問題のため進展していない。

 このように、この世界では当然社会的問題は存在するが、時代の変化に対応し、古い価値観は排除し、合理的に解を導こうと模索(もさく)している。そしてその結果、全体的には上手くいっているように見える、少なくとも元の世界よりは…