わて犯人
第二十一話 フジモトム ザ マッド菜園ティスト
「クックック……クックック……クケケケッ!コケッ!コケッ!コケーコッコッコ!!」
暗い研究室の中、フジモトムは一人、不気味な笑いを浮かべていた。
「もうすぐだ…もうすぐ世界は私のものになる…これさえ完成すれば…!」
「どうやら計画は順調なようですね、博士」
暗がりの中からもうひとつ声がした。
「お前か…。天才の私にかかればできないことなどない。ところで何の用だ?」
「お伝えしたいことがひとつ。探偵達が脱獄しました。」
「ふん、あんな雑魚共好きなだけ泳がしておけばいい。それよりもこれの完成が先決だ。」
「おっしゃるとおりで。では、奴らは私のほうで処理させていただきます。腕のいい殺し屋を雇いましたんでね。」
「興味ないな。用件が済んだのなら早く出て行け。研究の邪魔だ。」
「わかりました。では、『お仕事』頑張ってくださいね。」
暗闇の中、立ち去る足音だけが響き、やがてそれも完全に聞こえなくなった。
「ふん、獣め。知ったような口を。まあいい。今はこれに集中しないとな。」
フジモトムの見下ろす先には毒々しい紫の植物があった。
「ああ!この美しいつぼみが開く瞬間が早く見たい!わくわくするなぁ!どきどきするなぁ!クックック…アーッハッハ!」
破壊と殺戮が、始まろうとしていた。
「ボルシチってうめぇな!初めて食ったけどなかなかいける!」
「ちょっとマインさん、食べるのはいいですけどちゃんと話し合いに参加してください。フジモトムをこのまま野放しにしておくわけにはいかないでしょ。」
「ん?ジョンが食ってるのはなんだ?」
「これはボルハチだ。ボルシチの上位種でボルロクの親戚でもある。」
「へえ~そんなのあるのか。」
「アホな会話してないで真面目にやってください。」
「そうでごわす、事態は深刻でごわす。まずはおいどんの話を聞いてほしいでごわす。フジモトムの開発している新兵器についてでごわすよ。」
「新兵器だって?あいつ、違法ラーメンだけでは物足りずそんなものまで?」
「ここにおいどんが研究室から持ち出してきたその兵器のサンプルがあるでごわす。」
そういうとブーミンはどこからともなく紫色の植物を取り出した。
「なんだこれは?植物?」
「これはテンペストパープルハート、通称天パーでごわす。」
「へぇ、なかなか綺麗じゃねえか。これが兵器なのか?」
「そうでごわすね、もし仮にここでこの植物が開花したら……周囲100キロ四方の生物は全て死ぬでごわす。」
「なななななななななななななななななななななんだってぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええウヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!????????????????????」
「落ち着くでごわすよトムさん。これは人工的に造られた植物で、開花にも人が手を加える必要があるでごわす。危険はないでごわす。」
「そうか」
トムは落ち着いた。
「この植物は非常に栽培が難しく、つぼみの状態になったものは世界に2つしかないでごわす。そして今までこの植物が開花したことは一度もないでごわす。」
「ふむふむ。」
「しかし、フジモトムはその頭脳を生かし、もう開花まであと少しというところまで来てしまったでごわす。」
「しかし、これが開花すると大災害が起こるなんて、一体どういうことだ?」
「それはよくわかってないでごわす。何しろこれはマヤ遺跡で発見されたもので、大災害が起こるということも石碑に書かれていただけでごわす。」
「つまりそういう伝説ってわけか?それじゃ本当にそうなるかどうかわからないじゃないか。」
「あの天才のフジモトムが根拠無しに動くわけないでごわしょ。」
「ふむ、一理あるな。まあどちらにせよフジモトムはぶっ殺す予定だ。」
「助かるでごわす。よろしく頼むでごわす。あ、それから皆さんに渡したいものが
…ハッ!!マインさん危ない!!!!!!!でごわす。」
「ほえ?」
パリーン!!!!!!!
マインが食っていたボルシチの皿が粉々に砕け散った。
「ぎゃあああああああ俺のボルシチ!!!!!!!」
「スナイパーに狙われているでごわす!走って!!」