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わて犯人

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第十九話 思い出のメモリー


「いやーまさか本当に大道芸始めるとは思いませんでしたよ。結局逮捕されちゃったじゃないですか。」薄暗い監房の中、トムは深い溜息をついていた。
「だからショータイムって言ったじゃないか。」
マインは缶コーヒーを飲みながら一息ついていた。
「いやいや…」
「これ以上の口論は無駄と判断する。とにかくここを出る手段を探すぞ。」
「まあそうですね。」

「あれ?トムさんじゃないでごわすか?」
突然、どこからか声がした。

「ん?誰かいるんですか?どこです?」
「ここでごわすよ!ココ!」
よく見るとトムの足元には、薄汚いドブネズミがいた。
「あ!お、お前は…ブーミン!!!親切なドブネズミことブーミンじゃないか!」
「知り合いか?」
「昔僕を救ってくれた恩師ですよ。」
「いやぁトムさん久しぶりでごわすねぇ。8年ぶりでごわすか。」
「へぇ、その話詳しく教えてくれよ。」
「ん~、別にいいですよ。あれは僕がまだ悪ガキだった頃の話です。」
トムは遠くを見つめながら話し始めた。

~8年前~

「ふぅ~やっぱ授業をサボって来るネズミーランドは最高だぜ!ミッニーちゃんマジ可愛かったぁ!結婚してぇ!」
クラスの問題児だった僕は、いつも授業をサボってはネズミーランドに来ていました。
「次はあのスプラッチューマウンテンとかいうのにしよう!…ん?一時間待ちだぁ!?ふざけんな!オラァ!お前らどけどけ!」
僕は他の客を突き飛ばしながら奥へ行こうとしました。いや本当にお恥ずかしい。

「ちょっとお客さん!困るでごわすよ!」
「ああ?誰だぁ?どこにいる?」
「ここでごわすよ!ココ!」
足元を見るとそこに小さなドブネズミがいました。これがブーミンとの出会いでした。
「なんだこのきたねえネズミは?」
「おいどんは従業員のブーミンでごわす。お客さん、他のお客さんに、迷惑をかけるのはやめてくれでごわす。」
「うっせぇな。別に俺一人くらい構わねえだろうが。」
「…あんた、いつもそうやって自分一人くらいルールを犯しても構わない、とか俺なんかいてもいなくても変わらない、とか思ってるでごわしょ?」
「ああ?んだテメェ喧嘩売ってんのか?」
「あんたもいい年でごわしょ。いい加減幼稚な考えはやめるでごわす。」
「うっせえんだよ!」
僕はカッとなってブーミンに殴りかかりました。
「!?」
次の瞬間、僕の体は宙に浮かんでいました。
そしてすぐに全身を激しい衝撃が襲いました。
僕はブーミンに投げられてしまったのです。
「い、いてて…」
「おいどんはドブネズミでごわす。ちっぽけで無力な存在でごわす。でも、修行を積んでこうして人間を投げ飛ばすことぐらいはできるようになったでごわす。だからあんたみたいに何も努力しないで自分を貶めている人間を見ているとむかむかするでごわす。」
「・・・!」
僕は呆然としていました。
ドブネズミに投げ飛ばされたことにではありません。
ブーミンの言葉が胸に響いて、しばらく口も体も動きませんでした。

その日から、僕はネズミーランドに行くことをやめました。
何もする気が起きなくなり、ただ街をぶらぶらと歩く日々が始まりました。
そんなことを続けて一ヶ月くらいでしょうか。僕がまたブーミンに出会ったのは。

作品名:わて犯人 作家名:熊田熊子