朝日に落ちる箒星
「一瞬、思い出しちゃって。ごめん。下着だけ、つけてもいい?智樹も、できれば」
あぁ、と言って俺はとりあえず枕元に準備してあったティッシュでモノを拭って、「落ち着け、俺」と念じる。そしてボクサーパンツを履いて布団に戻った。
「ごめん、ね。何かうまくいかなくて」
天井に向けて言葉を吐く君枝の額に手をやり、前髪をかき上げる。
「いいんだよ、少し進んだよ、前よりもかなり。少しずつ、な」
そう言うと彼女はこちらを見て、自信なさ気な笑顔を向けた。
「裸でこうして同じ布団に寝てるってだけだって、君枝にとっては大きな進歩だろ。まぁ、俺はただ嬉しいだけなんだけど」
尻すぼみになった言葉に君枝はクスっと笑って「ありがと」と吹いたら飛びそうなか細い声で言う。君枝の手を握ると、俺と君枝のブレスレットがこすれ合った。彼女の冷たい指先を暖めるように、俺は両手で手を握り、眠りに就いた。