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早百合 相原ゆかは、家庭内暴力に囲まれて育った。相原加奈子は、夫の暴力に悩まされながらも娘に精神的に依存することで生きていた。ゆかは、そんな母親を憎んでいた。そして同時に、そんな母親を愛してもいた。ゆかは気づいていない。これが、相原ゆかの物語。……もっと、知りたいと思った。この事件にかかわった人のこと、そして彼らが知る叶内大樹のことを。探しても、探しても見つからないものをまだ探し続けてる。細い糸でいい。彼につながるものが欲しかった。今手元にある、たくさんの少年犯罪の資料じゃわからない、彼の……彼らのことが、知りたかった。


早百合退場





権田  待たせて悪かったね。ゆかちゃんと言ったかな。
ゆか  はい。
権田  今回のことは気の毒だったね。君も辛いとは思うが、少し捜査に協力してほしい。いくつか質問してもいいかい?
ゆか  はい。
権田  君は昨日の犯行時……つまり、お母さんが自宅で発見されたとき、一緒ににいたかい?
ゆか  いいえ私はほかの人と約束があったので二時ごろに出かけました。
権田  一緒にいた、叶内君だね?
ゆか  はい。
耳川  叶内君とは、高校の同級生ですね? そして叶内君のお兄さんは……。
ゆか  逮捕されました。それが? 叶内君になにか関係あるんですか?
耳川  いえ、それは……。
権田  すまないね、確認したかっただけなんだよ。
ゆか  ……。
権田  二時ごろに家を出て、それからずっと叶内君といたんだね?
ゆか  はい。本屋に行ったり、ファーストフードに入ったりして、ぶらぶらと。
権田  君たちは、その、付き合っているの?
ゆか  いいえ。
権田  付き合ってるわけじゃないけど、一緒に遊ぶんだ。
ゆか  普通のことですよ。
権田  そうかぁ……いや、時代が変わったねぇ。私らのころなんか、女の子と外を歩くってだけでそりゃあもう緊張して、電話だってそうだよ。そのころは携帯電話なんてないだろう? 家の電話なんだよ。家族が出ないように祈りながらかけてたもんさ。
ゆか  はあ…。
権田  あ、いやいや、つまらない話をしたね。
ゆか  刑事さんは、私のことを疑っているんですよね?
権田  えっ? いやいや、そんなことはないんだよ。これは、どちらかと言えば君の潔白を証明するための事情聴取だと思ってください。一応関係者全員の事情聴取はしなきゃいけないことになっているので。
ゆか  そうですか。じゃあ、叶内君にも事情聴取してるんですか?
権田  そうだね。なにか?
ゆか  申し訳ないなって、思うから。私が叶内君と出かけてなければ、こんな面倒なことにならなくて済んだのかなって。
権田  それは仕方のないことだよ。君だって、お母さんがあんなことになるなんて思っていなかったんだろう?
ゆか  はい……でも。
権田  叶内君もわかってくれるよ。じゃあ。今日はお疲れ様。帰っていいよ。
ゆか  はい。失礼します。
権田  またたびたび話を聞くことになるかもしれないけど、そのときはよろしく頼みます。
ゆか  ……はい。

ゆか退場

耳川  権田さん、あんなこと言っていいんですか? また話を聞くことになるなんて。
権田  いいんだよ。ちょっとカマかけるくらいで。母親が死んだってのにあの落ち着きはどうだ。犯人は自分だと言っているようなもんだ。
耳川  最初は娘も巻き込まれたのかって話でしたが、今朝けろっとした顔で現れましたからね。男連れで朝帰りですよ?
権田  やっかむな、見苦しい。
耳川  でも、叶内大樹も同じ証言をしてるし、店の人間も同じこと言ったらアリバイが成立しちゃいますよ。
権田  いや、叶内大樹の証言が全てだ。店の人間なんて、ファーストフードなんか特にシフトの入れ替わりがあって大して信憑性のある証言なんかとれねぇよ。あの二人がよっぽど目立つなりでもしてなきゃ、記憶してるはずないだろう。
耳川  そうかあ。じゃあ監視カメラですね。
権田  あのなぁ、犯行時監視カメラに映っていなかったとしても「外を歩いていました」なんて言えば一発じゃねぇか。お前は頭を使え頭を! このおつむは鳥以下か!
耳川  一応権田さんよりいい大学出てますよ。
権田  お前は馬鹿なんだよ、人間的な意味で!
耳川  酷いですよ権田さん。
権田  酷くない。しかしまあ、逆に考えればあの二人のアリバイはないって事にもなりうるな。
耳川  え?
権田  アリバイがないって断定できないって事は、アリバイがあるっていう断定もできないってことだ。
耳川  意味がわかりません。
権田  馬鹿だな本当に! 普通はこういう時二人が共犯って考えるんだよ、基本だろうが!
耳川  ああ、そっか!
権田  本っ当に、銀河系を揺るがすほどスケールのでかい馬鹿だなお前は。
耳川  銀河系は揺れませんよ。
権田  わかってるよそんなことは!
耳川  自分で言ったくせにぃ。
権田  てめぇ絶対部長に言ってコンビ解散してやる。
耳川  それはないですよ、だって僕部長から「権田は暴走する癖があるからお前はしっかり権田を抑えろよ」って言われてますから。
権田  部長、明らかに人選ミスですよ……。
耳川  それより、どうします? 聞き込みに行きます?
権田  ああ。十中八九あいつら二人が犯人だ。二人の交友関係共通点、全部あたるぞ。










早百合が待っている
権田が入ってくる

早百合 お久しぶりです。権田さん。
権田  大きくなったね、と言っていいのかね。富永さん。
早百合 お元気そうで。
権田  この前肝臓やって退院したばっかりさ。さすがにこの歳になるとそこらじゅうガタがきていけねぇ。
早百合 耳川さんも、もうすぐ見えるそうですよ。
権田  ……そうか。
早百合 ……。
権田  ……いい、天気だなぁ。
早百合 ……。
権田  記事、読んだよ。
早百合 ありがとう、ございます。
権田  よく調べたね。
早百合 知っていたこともたくさんあったんです。わかっていなかったんです、私。
権田  仕方ないよ、あんたはまだ子供だった。

耳川がやってくる

耳川  すみません遅くなって。権田さん!
権田  おう。どうした。
耳川  ちょっと嫌な事件があって。
早百合 お久しぶりです。
耳川  きれいになったな〜。
権田  口説くな。
耳川  はは、すみません。
早百合 今日は、来ていただいてありがとうございます。
権田  ……。
耳川  あの事件のことですか。
早百合 はい。
耳川  あなたも被害者だった。
早百合 でも、加害者でもあったかもしれません。
権田  そういう考え方をすると……辛いだろうに。
早百合 いいえ……いいえ。
権田  しかし、よく報道にかかわろうと思ったね。あんたは報道の悪意を知っている。
早百合 だからこそかもしれません。これは、私なりの復讐なんです。たぶん。
権田  ……。
耳川  ゆかには会いましたか。
早百合 ええ。あの事件の後、時々連絡を取り合っていたんです。
権田  そうか……女はたくましいな。いつの間にか仲良くなってる。
早百合 兄のこと、知りたかったから。私の知らなかったこと、全部。
作品名:Re;cry 作家名:barisa