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上海lovers

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春蘭  さ、あなたもいつまでもしゃがみこんでないで立ったら。 男が情けない!
秀明  君、強いんだね……!
春蘭  あなたは弱すぎるかもね。
秀明  ありがとう、えーっと、春蘭。俺は王秀明。おかげで助かった!
春蘭  無事で何よりね、秀明。それにしても……追いはぎに狙われるのも仕方ないかもね。そんなに大きな荷物を持っていてそれだけ無防備なんだもの。
秀明  恩に着るよ。春蘭。見た目はこんなんだけど大したものは入ってない。というか、これが俺の持ち物すべてなんだ。
春蘭  あなた、家は?!
秀明  ないよ。
春蘭  まさか! どうやって生活してたのよ。
秀明  路上生活もなれればそれなりさ。紙と筆があれば何でもできるんだ、俺はね。
春蘭  驚いた。自分の身も守れないのにそんなことするなんて、あなた余程の向こう見ずね。
秀明  今日は春蘭が守ってくれただろ。
春蘭  馬鹿言ってんじゃないよ! 今度は自分の身くらい自分で守りな!
秀明  とにかくありがとう。今度小説を書いたら真っ先に君に見せるよ。

藤沢登場。続けて田代、堀田。

藤沢  うん、そんな感じそんな感じ。
田代  やるじゃん、堀田。
堀田  どうも。
安永  俺もカンフーしたぁい。
堀田  お前は小説家だからだめ。お前が強かったら話変わっちゃうだろ。
田代  でもでもどうして小説家なの?
堀田  え? それはー……。
藤沢  俺も興味あるな。
安永  なんでなんでー?
堀田  な……なんでもいいじゃないか、ほら、俺小説書いてるから身近なんだよ、小説家って。
田代  つまり自分投影? ふぅぅぅうん?
柳   いいじゃない。描きやすい方法で描けば。
田代  そりゃそっか。
藤沢  ところでこれからどういう話になるんだ?
堀田  この秀明が春蘭の働いている大衆食堂に住み込みで働くようになるんです。
安永  まぁ上海loversだけあって。
柳   恋に落ちるのね? 秀明と春蘭が。
堀田  秀明は春蘭をモデルに小説を書くんだ。ところが!
安永  ところが!
堀田  春蘭は闇組織のボスに好かれてしまう。
藤沢  なるほど。その闇組織のボスはどうするんだ?
堀田  力ずくじゃあ春蘭が自分の物にならないと知ったそいつは、秀明を人質にするんだ。
柳   春蘭はどうするの?
安永  そこは愛を貫かないとー。
田代  ムーランルージュみたい!
藤沢  楽しみだな。
柳   藤沢には書けない類の話だものね?
田代  そうなのなんだか新しい!
堀田  藤沢さんはどんな話を書かれるんですか?
柳   くらーい話。
田代  へこむ話。
安永  人間の嫌なところをこれでもかって見せ付ける話。
堀田  ……壮絶ですね……。
藤沢  みんな言いすぎだろう。そこまで嫌な話書いた覚えはないけど。
田代  なんかね、演じててたまに鬱になる。
安永  俺はならない。
田代  あんたには聞いてない。
安永  あなたは口が減らない。
田代  あんただけには言われたくない。
安永  俺が言わなきゃ誰も言わない。
田代  あのなあ!
藤沢  そのへんにしとけって。
柳   堀田君おどろいてる。
堀田  ……前から思ってたんですけど……安永と寿々さんのやりとりって……アドリブですか? それとも仕込んでるんですか?
安永・田代  いや?
田代  台詞だよ?
安永  台本に書いてある通りに……。
藤沢  正真正銘ナマのやりとりだよ。
堀田  なんだか今垣間見ちゃいけない演劇の裏側を見た気がする。
田代  オトナの事情よ。
安永  公然の秘密よ。
柳   お約束なのよ。
堀田  わかったようなわからないような。
藤沢  とにかく楽しみにしてるよ堀田君。
堀田  はい、がんばります。
藤沢  それじゃ、俺はこれで。
田代  ええー?
柳   そういえば用事があるって言ってたわね。
安永  俺はそんなに暇じゃないのさ、ってか。
藤沢  そんなとこだね。じゃ、また。
田代  はいよー。
柳   また。
安永  達者でなー!

藤沢、はける

堀田  かっこいいなー、藤沢さん。
柳   そうなの?
田代  堀田ってもしかしてそういうひと?
堀田  そういうひとってどういうひとですか寿々さん!
安永  堀田、もしかして俺のこともそういう目で?
堀田  だからどういう目だよ!
柳   ……。
堀田  柳さんまで目をそらさないで?!
柳   あはは、ごめんなさい。冗談よ。
田代  半分はね。
堀田  半分って!
安永  半分の、半分の、半分だけどな。
堀田  それほとんど冗談じゃないってことじゃん!
田代  あー、台詞覚えないとなー。
安永  じゃあ、演出もいないし今日のところはこれで解散かな。
柳   そうね。
田代  んじゃ、あたしこのあとバイトだから。じゃね!
柳   私も。それじゃ。
安永  おー。気をつけて帰れよー。
堀田  安永はどうするんだよ? これから。
安永  俺? 俺は暇だからな。
堀田  そうか。ちょっと付き合ってくれないか?
安永  付き合ってって……お前本当にそういうやつだったのか……?!
堀田  ちーがーう! これから脚本を推敲するんだけどさ、ちょっと意見聞きながらやりたいから。
安永  堀田……。
堀田  なんだよ。
安永  嬉しい! 俺は嬉しいぞ! そんっなに演劇を好きになってくれたのか!
堀田  離せって気持ち悪いって暑苦しいっておい!
安永  さー、どっこまででもお付き合いしますぞ!
堀田  本当、あんたって馬鹿なんだな。
安永  演劇馬鹿とは、よく言われる。
堀田  まったくだ。












3.

藤沢  それで、闇組織のボスが俺ってわけか。
田代  ぴったりなんじゃない?
柳   得体が知れないからね。
藤沢  美鈴は俺に厳しすぎやしないか?
柳   そんなことないわよ?
田代  ほらっ、練習するよっ?

藤沢は九(く)龍(りゅう)として劇中劇を演じる

藤沢 「春蘭、いい加減にしたらどうだ?」
柳  「いい加減にするのはあんたのほうだよ! あたしへの腹いせって言って、関係のないうちの店荒らしてるんじゃないよ!」
田代 「春蘭、おやめよ、もういいようちのことは」
柳  「よくないよおかみさん! あんなことされて、許して良い訳ないでしょ!」

堀田  おはようございます。
藤沢 「そんなこと言って良いのか? こいつがどうなっても……いいんだな?」

藤沢が堀田を楯にとる

堀田  えええっ?!
柳  「秀明!」
堀田  ?!
田代 「ちょっと、なにするんだい!」
柳  「九龍! 秀明を放して!」
藤沢 「……そんなに大事か? この男が」
柳  「なにがしたいのよ!」
藤沢 「こいつ……日本人なんだってな?」
柳  「どうして……そのことを……」
田代 「日本人……?!」
藤沢 「おい日本人。このご時世だ。日本人ってバレたら……面白いことになるな?」
柳  「何を」
藤沢 「何をされても文句は言えないよな?」
柳  「……卑怯者!」
作品名:上海lovers 作家名:barisa